北北海道を牛柄トラックで駆ける牛削蹄所。菅原道北削蹄所のオフィシャルサイトです。

牛と塩のお話し

牛の餌は主に牧草ですが、牧草に含まれていない塩分やミネラルの補給も大切です。

塩と必要ミネラルを硬く固形状にした「鉱塩」。
餌とセットで牛が補給できるように置かれています。

鉱塩にも種類があり、ビタミンEの分量違いなどで牛の栄養をコントロールできます。
牛舎内にはこの四角い塊がありますよ^^

by SAGA

ゼノアック 鉱塩E100TZ

2014-2-21 | Leave a Comment

「北の蹄 第48号」発行になりました

北海道牛削蹄師会の会誌「北の蹄 48号」が発行になりました。
内容は昨年開催された海外悪性伝染病防疫研修会の様子や、フォトニュースなどです。

by WASHIMI









2014-2-14 | Leave a Comment

とある獣医師の独り言12

今回は蹄底潰瘍の治療についてお話しします。蹄底潰瘍の治療には先月も少しお話しましたが、患部のみを除去しても蹄骨による蹄真皮の圧迫の原因を除去しなくては治りません。

一昔前は蹄底潰瘍の治療は馬の治療を応用し、『患部に穴を開け排膿させる』という方法が一般的でした。この方法は確かに蹄壁で体重を支えている馬には有効です。(馬は排膿させるだけで治ることが多く、蹄壁は削ってはいけないそうです。)一方、牛は排膿させるだけや、潰瘍の部分をすり鉢状にくり抜くだけでは治りません。その理由は牛の体重は蹄壁で支えるのではなく蹄底全体で支えているからです。


【写真1 肉芽の突出】


【図1 蹄球枕の位置】

蹄底潰瘍の治療経過で(写真1)の矢印のように肉芽が飛び出てくるのを見たことはありませんか?飛び出す原因は牛の蹄の構造にあります。このコラムの3話でもお話しましたが、牛の蹄は蹄底の後2/3の部分には蹄球枕というクッション装置があります(図1)。

蹄底潰瘍によって形成された浮いた角質のみをすり鉢状に削ると、蹄球は部分的に残ります。するとその残った蹄球部に体重が掛かり蹄真皮内部の蹄球枕は圧縮され、その圧力は一番薄い病変部の穴から肉芽となり飛び出してくるのです。この肉芽が飛び出した状態では傷はいつまでも治りません。




【図2 ヒールレステクニック】

そこで蹄球に負重がかからない処置=ヒールレス(かかとを無くす)テクニック(図2)が必要となるわけです。





【図3 ヒールレスの削切部位】

それでは蹄底潰瘍に対するヒールレスについて簡単に説明していきましょう。まずは潰瘍によって形成された坑道(浮いている角質)をすべて削切します。そして軸側蹄壁の始まる部分から先の1/3を残して蹄球は削ります。(図3参照)その後傷をよく洗浄し、感染させないように被覆材で覆い、包帯を巻きます。

これらの処置によって蹄球が免重できるうえにさらに蹄骨の先端の方へ負重が移動するため蹄骨の後端による蹄真皮の圧迫も緩和され潰瘍の治癒の促進にもなります。

ただし、何らかの原因(遺伝による球節の沈下、ルーメンアシドーシスによる屈腱の伸び、長期にわたる削蹄の不備による蹄の変形など)で蹄球部の角質が異常に薄くヒールレスにできない場合には反対側の蹄に蹄ブロック(下駄)をつけて罹患蹄を浮かせて、患部を免重するようにする方法も非常に有効です。

ここで注意しなくてはいけない点は、蹄ブロックを長期にわたり装着したままだと、装着した側の蹄に荷重がかかり蹄底潰瘍になるケースが多くみられるため、治療が終了してから1~2週後にはブロックを除去するべきだとおもいます。

このように蹄底潰瘍の治療には蹄球部の免重が一番重要というわけです。
次回は趾間の蹄病についてお話します。

(図2)は牛の跛行マニュアルから、ほかは牛のフットケアガイドか引用させていただきました。

by とある獣医師

2014-2-3 | Leave a Comment

砥石の紹介

前回のコラムでは削蹄工具の鋼の話題がありました。
鋼なので定期的に砥石を使い研ぐメンテナンスが必要となります。
これまで様々な砥石を使ってきましたが、満足度の高い砥石を今回紹介します。


シャプトン社の「刃の黒幕」シリーズです。
セラミック砥石のトップブランドで、砥石の減りが少なく、長時間水に浸けることなくすぐに研げるのが特徴です。
種類も多く揃っており、お気に入りのアイテムです^^
より良い砥石をお探しの方はぜひ!

リンク:シャプトン株式会社

by EITARO(sato)

2014-1-31 | Leave a Comment

削蹄工具と鋼(はがね)

当社では牛の蹄を鎌や鉈(なた)で切削します。
この工具の刃先をよく見てみましょう。

写真の工具は、鉄のかたまりを工具らしい形に整えて尖らせたものではなく、よく切れるノウハウを込めて作られています。つまり包丁など同じような構造です。ざっくり言うと、

炭素鋼・・・硬い鉄
軟鋼・・・軟らかい鉄


の2種類の鉄を張り合わせて刃先ができています。
写真右の鉈の刃先が少し黒くなっている部分が硬い鉄の部分で、研ぐと切れ味が増します。
切れ味は作業効率に影響する大切なポイントです!

by SAGA

2014-1-24 | Leave a Comment

おすすめショップのご紹介

急なパンクや油圧ホース漏れなど困ったことがありませんか?
突然のアクシデントはタイムロスですよね。。。
でもそんな時は名寄市の”ラヂエーター田中”へ!



パンクはショップで迅速修理、交換は現場で行いタイムロスが少なく済みます。


トラクター以外ももちろんOK。


出張油圧ホース製作にも対応!


各種カプラを用意しております。


大型タイヤの組み替えもOK。大型チェンジャーで余裕の対応。





ぜひおすすめです^^

ショップ情報

ラヂエーター田中
タイヤ販売修理をはじめ、大型タイヤチェンジャー完備、油圧ホース移動車で出張制作と幅広く展開
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詳しくは↓↓ラヂエーター田中 サイトで!

2014-1-17 | 1 Comment

とある獣医師の独り言11

あけましておめでとうございます。今年もこのコラムを通して少しでも皆さんに牛について理解していただいて、より多くの牛が健康で快適な生活を送れるようにできるだけ分かりやすいお話ができたらと思いますので、本年もお付き合いをよろしくお願いします。

では、さっそくですが今月は化膿性蹄皮炎と蹄底潰瘍についてお話していこうと思います。実は恥ずかしながら私もつい最近までは両者をよくわからず、混同して覚えていたことがあります。このコラムでは何度も出てきている蹄底潰瘍ですがここでしっかり覚えていただければと思います。

化膿性蹄真皮炎とは
初めて聞く方も多いかと思いますが蹄底から異物、たとえば尖った石、ガラス片、釘などを踏むことにより蹄底に傷をつけ、そこから化膿が蹄真皮に進行していく蹄病です。放牧している農場で雨上がりによくびっこを示すのもこの化膿性蹄真皮炎の事が良くあります(趾間腐乱の方が多いですが)。原因は放牧場までの通路が雨で洗われて表面に尖った砂利が出てくることで、蹄底に傷ができることにより起こります。

蹄底潰瘍とは

図1 ヒトの褥瘡(じょくそう)のでき方



図2 牛の蹄底潰瘍


蹄底潰瘍は人間の褥瘡(じょくそう)の発生とよく似ていると言われています。褥瘡とは、床ずれのことで、専門用語では「圧迫による軟部組織の虚血性壊死(きょけつせいえし)」と定義されています。簡単に言えば寝たきりの人がうまく寝返りできず、骨(特に突起状になった肘やかかと等の骨)と寝具の間で組織が圧迫されて血液の循環障害が起こり、その部分が壊死してしまうことをいいます。(【図1】参照)  

一方、蹄底潰瘍の原因は様々ですが、何らかの要因で蹄骨が蹄真皮を圧迫して蹄真皮が壊死することにより起こります【図2】。ですから両方とも血行障害による組織の壊死と言う内側からの要因という意味でよく似ていると言うわけです。

このように化膿性蹄皮炎は外因性の炎症、蹄底潰瘍は内因性の炎症と言うことがお分かりかと思います。どちらも発生原因は違いますが、炎症と言う意味では同じです。ですから放置すれば化膿が進行して蹄骨を侵食しますし、蹄関節炎にも移行し最悪は断蹄にまで悪化します。

これらの治療の話は来月に回しますが、化膿性蹄真皮炎は原因の異物とその周囲の坑道の除去で済むため比較的簡単に治癒しますが、蹄底潰瘍の場合は蹄骨による真皮の圧迫の原因を撤去しない限り治癒しないもしくは再発を繰り返すため、一般に治り辛いと言われています。たとえば、原因がアシドーシスにあれば飼料の見直しが必要であるし、内外蹄のバランスが原因であれば正しい削蹄の実施が必要であるし、牛が寝ないのが原因であればその原因(ストールの安楽性、暑熱対策など)の追求が必要になります。

他の蹄病にも言えることですが、われわれ獣医師が関与できるのは治療の部分でしかありません。蹄病を防ぐには酪農家さんの毎日の牛の観察と削蹄師さんの正しい削蹄にかかっていると言えるでしょう。

来月は蹄底潰瘍の治療についてお話していきたいと思います。

by とある獣医師

2014-1-8 | Leave a Comment

年頭のご挨拶


新年あけましておめでとうございます。
年頭にあたり一言ご挨拶申し上げます。
昨年中は格別のご厚情を賜り、誠に有り難うございました。
本年を迎えられたのは、畜主様のご理解、獣医師の協力、削蹄師の絆、関係者様のお力添え、
皆様のご協力あってのものだと思います。
『牛の気持ちになって』の基本を大切に、地道に、ひとつずつ、
出来る事から取り組んで参ります。
本年もスタッフ一丸となり、これまで以上に邁進して行く所存です。
本年も変わらぬお引き立てのほど宜しくお願い申し上げます。

菅原洋充

2014-1-2 | Leave a Comment

牛の適温域は?

牛は牛革を身にまとっているので寒さに強い印象です。
では牛の適温域はどのくらいでしょうか?
(下表参照)

意外と繁殖牛は-10℃と強いですが子牛は寒さには弱いですね。
では子牛が寒さに弱い要因は?

・子牛は親牛に比べ皮下脂肪が少ないから、寒さに弱い
・体重が小さい割には体表面積が広いので、体表面からの発熱が多い
・第1胃は発酵槽(第1胃内部の温度は約40℃)とかなり暖かいのですが、子牛の第1胃は発達していないので、体内からの発熱が少なく寒い


といった要因があります。





育成牛の高温は30℃までなので、やはり厚い牛革があると夏バテしてしまうのですね(^^;)

by SAGA

参考資料:鹿児島県、防寒対策の徹底を(特に子牛に)
写真素材:Photo index

2013-12-19 | Leave a Comment

平成25年度海外悪性伝染病防疫研修会に出席しました

先月11月29日に札幌市北海道獣医師会館にて「平成25年度海外悪性伝染病防疫研修会」が開催され出席しました。
研修会の内容をレポートします。

■北海道獣医師会館前にて。豊富町竹田削蹄師(写真右)も道北地区から出席しました。


■北海道獣医師会会長兼、北海道家畜畜産物衛生指導協会副会長 髙橋徹氏の挨拶。


■講演Ⅰ
「バイオセキュリティによる疾病予防」
農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
寒地酪農衛生研究領域長(北海道支所長) 恒光 裕氏の講演です。




バイオセキュリティとは「病原体の進入及び拡散を防ぐための管理技術」です。


原理として、
・農場への病気の侵入防止
・農場内での病気のまん延防止
・動物における抵抗力の増強

です。


農場への進入防止として「ヒト・家畜(牛)・餌」を対策する必要があります。
農場内での病気のまん延防止として「清掃・洗浄・消毒」が必要とされます。
動物における抵抗力の増強として抵抗力の増強すなわち「栄養・ワクチン・ストレスの除去」が必要です。


海外悪性伝染病とは
・平常時には存在しない感染病であり、発生は突発的で、急速かつ広範囲に伝播する。
・致死量が高く、直接的な経済被害が大きい。
・国際貿易ルールに基づき畜産物の貿易が規制されるため、地球規模の経済活動に多大な影響を及ぼす。

とされます。

代表的な海外悪性伝染病は「口蹄疫」です。
口蹄疫が入ってくる原因は、人または畜産物とは関係のない物が挙げられます。



■講演Ⅱ
「家畜伝染病発生時の防疫措置について」
北海道石狩家畜保健衛生所 専門員 山之内 健氏の講演です。


口蹄疫とは偶蹄類動物に感染する病気で、
潜伏期間は牛で平均6.2日、豚で平均10.6日です。
伝播は接触(飛沫感染)、生産物、汚染物品です。
そして治療法が無く伝播力が非常に強いのが特徴です。

最近の日本では平成22年4月~7月に宮崎県で発生しました。
殺処分を経て平成23年2月5日に清浄国に復帰しました。


発症すると蹄冠部皮膚のびらん等目視確認できます。


口蹄疫防疫は常にスピードと連携で対処します。






感染牛が発見された場合、牛の殺処分と埋却、畜舎内等の消毒を行い徹底的な防疫を行います。








作業者の防疫衣も徹底的に管理されます。






車両や持込物品からの感染が考えられます。
進入や取り扱いにも十分に対策します。





■実習
「防疫衣の着脱手技について」
北海道石狩家畜保健衛生所 川島獣医師、永井専門員による実習です。


正しい防疫衣の着用方法です。


ウィルスが付かないよう装着方法は重要です。




防疫服は2枚着使用します。






手袋も2着使用し、長靴の衣類の繋ぎ目もガムテープで塞ぎます。






次に防疫衣を脱ぐ手順となります。衣類の外側に触れぬよう慎重に行います。




■北海道家畜畜産物衛生指導協会 専務理事 武内 弘之氏の挨拶です。


全道各地から集まった削蹄師が正しい知識を身につけ防疫技術を学びました。
今後の行動に反映し、正しい防疫を行います!

by WASHIMI

2013-12-13 | Leave a Comment

とある獣医師の独り言10

今月は先月に続き白線病の後半のお話をしたいと思います。【図1】の2、3、4の部位に白線病ができた場合には蹄鞘と蹄骨の間が狭く、膿が広がる隙間が少ないため、強烈な跛行(びっこ)を示す話は前回もしました。

【写真1】は白線部に出血跡が見られそこを削切していくと排膿が見られた写真です。この場合は膿を排出させた後、坑道が形成された角質を丁寧に除去することにより治癒します。【写真2】参照





また、蹄尖部にできた白線病を放置しておくと、蹄真皮(A)が広範囲に破壊され蹄骨(B)が露出してしまうことがあります。【写真3】を参照

このような場合は黒く見えている蹄真皮を出血するまで削り新鮮な肉を露出させ(デブリドマンといいます)、さらには蹄骨も同様に変色している部分を削り白い骨を露出させます。傷の治癒には血液が必須なため、荒療治に思えるかもしれませんが重要です。

そして最も重要なことは健康な方の蹄(【写真3】では右の蹄)に蹄ブロック(下駄)をつけ患部に負重させないようにすることです。傷はぶつけることにより炎症が広がるため、反対側の蹄を高くすることで床に当たらないようにしてあげることで治癒を促進します。

これは白線病に限ったことではなく、すべての蹄疾患に言えることです。



また、白線病を見つけ角質の除去と排膿によって一時的に跛行が改善されても一週間後に再発することが良くあります。そのような蹄を再検査すると【写真4】のように黒っぽい肉芽組織が飛び出している事があります。



また蹄冠部のあたりが赤くはれ上がっているのが分かると思います。これは坑道の角質(変質した角質)の除去が不十分なために起こる症状で、治すためには飛び出した肉を切除し、角質を【写真5】のように広く削切する必要があります。この際にも蹄ブロックの装着は非常に有効です。



白線病はただでさえ他の蹄病より治癒に時間が係るうえに放置しておくと深部感染を起こし抗生物質による治療さらには断蹄が必要となることしばしばです。

【写真6】はとう嚢、とう骨、屈腱まで化膿が波及している写真です。こうなる前に治療を開始したいものですね。
どの蹄病にも言えることですが蹄病は早期発見、早期治療が大原則です。

今回も写真はすべて牛のフットケアガイドより引用しました。

by とある獣医師

2013-12-4 | 1 Comment

第16回 護蹄研究会に出席しました

毎年2月に開催している蹄に関するフォーラム「護蹄研究会」。
今年は11月16日に大阪で開催され出席しました。
場所は大阪国際会議場(グランキューブ)です。




そして今年は、これまでの護蹄研究会という一つのくくりではなく、
第34回動物臨床医学会年次大会の産業動物医学フォーラム一般講演の中で、護蹄研究会の一般演題の発表が行われました。

フォーラム内容は下記プログラムです。
■一般口演
牛乳の蹄骨炎を伴う蹄尖潰瘍の4症例 中村 聡志(NOSAIオホーツク 遠軽家畜診療所)
蹄病現地検討会を利用した蹄病治療 玉川 朋治(NOSAI広島 東広島家畜診療所)
など。

■護蹄研究会
ジャパン・メソッドその原理と原則 眞鍋 弘行(削蹄塾わたりがらす)
蹄病の国際問題 -英国Bristol第17回国際蹄病学会から- 吉谷 一紀(千葉県農業共済組合連合会北部家畜診療所)



蹄の知識を吸収し、さらなる技術の向上に努めます!

by sugaWara

2013-11-26 | Leave a Comment

第55回全国牛削蹄競技大会に出場しました!

全国一の削蹄師を決める「全国牛削蹄競技大会」、
今年は10月25日に茨城県鯉淵学園農業栄養専門学校にて開催されました。
各都道府県の予選を勝ち抜いた選手が本大会に挑みます。

北海道ブロックは8月に開催された「第20回北海道ブロック牛削蹄競技大会」で4位入賞を果たした当社菅原が全国大会への切符をつかみました。

その様子をレポートします。

■当社菅原が選手宣誓を行いました!


■はじめに牛削蹄判断競技です


■次に牛削蹄競技です




大会結果発表です!

最優秀賞
深見 哲久 (鹿児島県牛削蹄事業連絡協議会)

優秀賞
有留 寛之 (鹿児島県牛削蹄事業連絡協議会)

第三位
中野目 正明 (福島県牛削蹄師会)

おめでとうございます!
当社菅原は残念ながら入賞は果たせませんでした。
ですが来年も頑張りますのでぜひご期待ください。

by WASHIMI

2013-11-20 | Leave a Comment

とある獣医師の独り言9

今月からは蹄病の各論とその発生原因についてお話していきたいと思います。

最初は白線病(白体病または白線膿瘍とも言われます)について説明したいと思います。白線病の原因となる白線の脆弱(ぜいじゃく)を招くのが蹄葉炎であるという事はこのコラムで何回もお話してきたため省略させていただきます。

一度白線がもろくなると蹄底から砂や尖った石などが入りこみます。基本的には後肢の外蹄が最もなりやすく、まれに前肢の内蹄にも見られます。また白線病になりやすい場所は以前にもお話したとおり、【図1】の1→4の順です。
(この図は右の後蹄の図です)

特に【図1】の1の場所は硬い蹄鞘とやわらかい蹄内部の蹄球枕の収縮・拡張が歩行時に常に起こりひずみが発生しやすく、蹄骨に蹄鞘が直接くっついている蹄尖よりも白線の解離が起こりやすくなるため、最も白線病が起こりやすいと言われています。



白線に入り込んだ異物は蹄鞘内に深く入り込み、白線に坑道という溝を作り、同時に蹄真皮で化膿を起こします。さらに化膿によりできた膿は逃げ場がなくなり、蹄真皮を圧迫することによって痛みを起こし跛行を示すようになります。

【写真1】は蹄底を削切したところ白線部に出血跡が見つかりそこを削って行くとBの部分から排膿した写真です。またちょっとわかりにくいかもしれませんが、Aに示した蹄踵の蹄縁角皮から蹄球部に貯留していたと思われる膿が漏出しています。



白線から広がった膿は【写真2】のように蹄球部に膿瘍を作り蹄真皮と蹄の角質の間を解離させます。これを治癒させるためには解離によって壊死している蹄底の角質と白線の坑道をすべて削切し、蹄真皮(【写真2】のピンク色の組織)を露出させる必要があります。

ここを露出させることによって新しい蹄の角質を作らせるためです。



今回のように【図1】の1の近辺に白線病ができた場合は蹄踵にやわらかい部分がありそこに膿が貯留できるためそれほどの痛みは示しません。さらに多少発見が遅く膿が多量に貯留しても蹄踵の蹄縁角皮はやわらかいため容易に破裂(自潰)することが多く、とう骨やとう嚢などの蹄内部を侵食するようなことは稀です。

しかし、これが蹄尖部により近くなるに従って、膿が逃げる場所が少ないため跛行が強くなり、さらに蹄縁角皮も蹄踵に比べると硬いためしばしば化膿が蹄内部に波及します。更に蹄尖(【図1】の3の部位)や軸側壁(4の部位)に白線病ができた場合は痛みも重度であるし、感染も重度になる場合も多く治癒に時間がかかります。
来月はその辺についてお話したいと思います。

今月も写真はすべて牛のフットケアガイドより引用しました。

by とある獣医師

2013-11-6 | Leave a Comment

「北の蹄 第47号」発行になりました

北海道牛削蹄師会の会誌「北の蹄 47号」が発行になりました。
内容は8月にに湧別町で開催された第20回北海道地区牛削蹄競技大会などです。

by WASHIMI







2013-11-1 | Leave a Comment

スタッフ勉強会を開催しました



名寄市の駅前交流プラザ「よろーな」にて定例のスタッフ会議を行いました。
定期的なスタッフ会議でスタッフ間の共通認識の徹底を行いました。
先月上士幌町で開催された「オレ・イブセン上級削蹄師特別セミナー」の報告も行われ、蹄についての勉強会をしています!

by WASHIMI

2013-10-24 | Leave a Comment

動物たちの角の違い



一年ごとに角が生え替わるシカと違い、ウシとヒツジは生涯伸び続ける角をもっています。
ウシやヒツジのような角を洞角(horn ホーン)といい、シカのような角を枝角(antler アントラー)といいます。

洞角は前頭骨の角突起(骨で出来た芯)と角鞘(ケラチンというタンパク質の鞘)からできています。
ウシ亜科とヤギ亜科の角芯の内部は海綿状です。

ウシの角が前頭骨の側面から生えるのに対して、ヒツジの角は前頭骨の前部上面から生えています。
また、ウシではオスもメスも角はほぼ同じ大きさですが、ヒツジやヤギのメスの角は小さいです。

by SAGA

出典:牛の博物館

写真素材
ウシ: GATAG|フリー画像・写真素材集 1.0 / juanRubiano
ヤギ:黒ヤギ|CONETA.JP

2013-10-17 | Leave a Comment

削蹄セミナーに出席しました


先月9月30日上士幌町にて、公益社団法人日本装削蹄協会主催による「オレ・イブセン上級削蹄師特別セミナー」に菅原と萩野が出席しました。
セミナーはスライド講演と実技講演があり内容をレポートします。

■講師について
講師のオレ・イブセン氏はデンマークの認定削蹄師です。
50~800頭規模の牧場を補蹄枠3台使い、3チーム9名で年間55,000頭の削蹄を行っています。


■デンマークにおける削蹄の歴史
かつては、跛行を示す牛のみに、地元の鍛冶屋によって行われていました。
1970年代から、フリーストール牛舎の導入加速と同時に、定期的な予防削蹄が行われるようになりました。

デンマークにおいての削蹄の教育は、1960年に始まりました。
内容は、Dr.トウセイント・レイヴェンに唱えられた、ダッチメソッドを基盤としたものです。


■牛情報の一元管理
デンマークでは、削蹄の間隔は4カ月に一回が一般的です。
そして2010年から、蹄の健康状態の登録システムを導入しています。
これはデンマーク牛協会による無料のプログラムです。

蹄のデータは、既存のRYKという、妊娠情報や体細胞数、さらには抗生物質の使用状況などを管理するデータベースで
一括管理され、北欧のブリーダーに有力な情報として開示されています。このようにして、育種にも役立っています。


■デンマークの削蹄教育
2週間を3つのユニット、計6週間で学びます。
各ユニットでは実習訓練もありたくさんの経験を積むことが求められます。
このようなシステムは、北欧全体で行われており、発案はデンマーク人獣医師のナイン・カピオン氏によるものです。


■実技講習
KVK社の油圧削蹄枠を使い削蹄実技講習の様子です。




日々削蹄を勉強し続け、今後ともより良い技術と豊富な知識で蹄と向き合ってゆきます!

by sugaWara

2013-10-9 | 6 Comments

とある獣医師の独り言8

今回は蹄葉炎で起こる蹄の変化について話したいと思います。
蹄葉炎という用語は本来蹄葉の炎症を意味しますが、実際は蹄真皮全体の炎症を指すことが多くため蹄真皮炎と理解した方が分かりやすいかもしれません。一般に蹄葉炎になると以下のいずれかまたはいくつかが合併した変化が起こります。

◎蹄鞘の過剰形成

蹄真皮に炎症が起きると最初は血液が多量に流れ込みます。このことにより蹄鞘(蹄壁および蹄底)に過剰な成長が起こります。その結果としてやわらかい角質が形成されます。

◎白線部におけるやわらかい角質

上記の過剰形成は白線で最も起こりやすいため白線の結合がもろくなり、その結果白線部に異物の混入が起こり白線病の要因となります。

◎蹄底の角質の黄色化および出血

蹄葉炎は血管に障害を起こすため血液の中の血漿(けっしょう)が血管外に浸み出すため蹄底が黄色く変色すると言われています。さらに血管の障害が重度であれば血漿だけでなく血液そのものが浸み出し蹄血斑と呼ばれる蹄底における出血が起こります。(写真1、2参照)


写真 1 蹄底出血
蹄底潰瘍の好発部位(A)と白線(B)に出血が見られる。




写真2 蹄底出血
蹄尖と白線に出血が見られる。右の蹄には蹄血斑と黄色化が見られる。




◎蹄壁の裂蹄およびハードシップラインの形成

炎症がさらに進むと蹄真皮が腫れることにより血液の停滞(うっ血)がおこり、一時的な蹄の形成の停止が起こります。写真3は分娩直後に大腸菌性の乳房炎を起こし大腸菌の毒素により蹄の形成が完全にストップしたため完全な裂蹄が形成された例です。


写真 3



ここまで重篤でなくても、慢性的なルーメンアシドーシスにさらされると、ルーメン内の微生物が死滅することにより産生される毒素により蹄の形成が阻害され、写真4にみられるハードシップラインと呼ばれる水平な溝が出来上がります。


写真 4



また写真5のような粉末状の角質が詰まった蹄底のくぼみも蹄葉炎と関連していると言われています。


写真 5




◎蹄踵で歩くことと蹄の過剰形成による蹄尖の上方への回転と変形

以前にも述べたように蹄葉炎は蹄尖部で痛みが強いため蹄踵に体重をかけるため蹄は変形し、さらに不完全な蹄が過剰生成するため最終的に写真6のような異常な蹄の形になります。ここまでで蹄が変形してしまうと削蹄で簡単には元に戻すことは非常に困難となります。こうなる前に飼料の見直しによるルーメンアシドーシスの改善と正しい削蹄による負重の改善が必要となります。

写真 6



次回からは様々な蹄病の発生原因と治療方法についてお話していきたいと思います。
(写真はすべて牛のフットケアガイドから引用させていただきました。)

by とある獣医師

2013-10-3 | 2 Comments

ランボールギーニの牛

牛をかたどった企業ロゴは色々あります。
当社もその一つですが有名なところではランボールギーニ社でしょうか。


同じイタリアの自動車メーカーフェラーリは跳ね馬、そしてランボールギーニは猛牛。
ロゴだけでもライバルを感じます。

ランボールギーニといえばやはりカウンタックでしょうか。
時代を経てもなお存在感を増しているのはスーパーカーたる証。


でも元はトラクターメーカー。
20年ほど前でもデザインは妥協していません。
Lamborghini Formulaのデザインはなんと巨匠ジウジアーロ氏によるもの。

たしか当時の酪農誌「デーリィマン」か農業専門誌「ニューカントリー」に掲載されていた広告に、
このFormulaが”ジウジアーロデザイン”と宣伝していた記憶があります。

10年前ほど過ぎるとLamborghini Premiumへ進化。
こちらも巨匠のデザインによるものです。


そして今年発表のモデル、Lamborghini Nitro。巨匠ジウジアーロの勢いは加速します!

機能美と迫力のデザインにため息が出ます^^


ジウジアーロの話ばかりになりましたが、有名なデザインでは、
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場するデロリアンもその一つ。
いすゞの初代ピアッツアとか、初代フォルクスワーゲン・ゴルフなど歴史を刻んだ車を手がけています。
初代ピアッツアは個人的な好みですが、デロリアンになんとなく似ていますよね。

カメラ好きなら憧れるニコンのフラッグシップ一眼レフデジタルカメラ「D4」。
こちらのデザインも巨匠の作品です。
ランボールギーニからニコンへと結局話題はカメラの方向に流れてしまいました^^


by WASHIMI

2013-9-26 | 3 Comments

2024 菅原道北削蹄所|北北海道を幅広くエリアカバーする牛削蹄所です . | Blue Weed by Blog Oh! Blog