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とある獣医師の独り言11

あけましておめでとうございます。今年もこのコラムを通して少しでも皆さんに牛について理解していただいて、より多くの牛が健康で快適な生活を送れるようにできるだけ分かりやすいお話ができたらと思いますので、本年もお付き合いをよろしくお願いします。

では、さっそくですが今月は化膿性蹄皮炎と蹄底潰瘍についてお話していこうと思います。実は恥ずかしながら私もつい最近までは両者をよくわからず、混同して覚えていたことがあります。このコラムでは何度も出てきている蹄底潰瘍ですがここでしっかり覚えていただければと思います。

化膿性蹄真皮炎とは
初めて聞く方も多いかと思いますが蹄底から異物、たとえば尖った石、ガラス片、釘などを踏むことにより蹄底に傷をつけ、そこから化膿が蹄真皮に進行していく蹄病です。放牧している農場で雨上がりによくびっこを示すのもこの化膿性蹄真皮炎の事が良くあります(趾間腐乱の方が多いですが)。原因は放牧場までの通路が雨で洗われて表面に尖った砂利が出てくることで、蹄底に傷ができることにより起こります。

蹄底潰瘍とは

図1 ヒトの褥瘡(じょくそう)のでき方



図2 牛の蹄底潰瘍


蹄底潰瘍は人間の褥瘡(じょくそう)の発生とよく似ていると言われています。褥瘡とは、床ずれのことで、専門用語では「圧迫による軟部組織の虚血性壊死(きょけつせいえし)」と定義されています。簡単に言えば寝たきりの人がうまく寝返りできず、骨(特に突起状になった肘やかかと等の骨)と寝具の間で組織が圧迫されて血液の循環障害が起こり、その部分が壊死してしまうことをいいます。(【図1】参照)  

一方、蹄底潰瘍の原因は様々ですが、何らかの要因で蹄骨が蹄真皮を圧迫して蹄真皮が壊死することにより起こります【図2】。ですから両方とも血行障害による組織の壊死と言う内側からの要因という意味でよく似ていると言うわけです。

このように化膿性蹄皮炎は外因性の炎症、蹄底潰瘍は内因性の炎症と言うことがお分かりかと思います。どちらも発生原因は違いますが、炎症と言う意味では同じです。ですから放置すれば化膿が進行して蹄骨を侵食しますし、蹄関節炎にも移行し最悪は断蹄にまで悪化します。

これらの治療の話は来月に回しますが、化膿性蹄真皮炎は原因の異物とその周囲の坑道の除去で済むため比較的簡単に治癒しますが、蹄底潰瘍の場合は蹄骨による真皮の圧迫の原因を撤去しない限り治癒しないもしくは再発を繰り返すため、一般に治り辛いと言われています。たとえば、原因がアシドーシスにあれば飼料の見直しが必要であるし、内外蹄のバランスが原因であれば正しい削蹄の実施が必要であるし、牛が寝ないのが原因であればその原因(ストールの安楽性、暑熱対策など)の追求が必要になります。

他の蹄病にも言えることですが、われわれ獣医師が関与できるのは治療の部分でしかありません。蹄病を防ぐには酪農家さんの毎日の牛の観察と削蹄師さんの正しい削蹄にかかっていると言えるでしょう。

来月は蹄底潰瘍の治療についてお話していきたいと思います。

by とある獣医師

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