北北海道を牛柄トラックで駆ける牛削蹄所。菅原道北削蹄所のオフィシャルサイトです。

とある獣医師の独り言14

4月ですね。今年は春が早いような気がしますが、皆さんのところではどうですか?早く雪が溶けて、桜が咲いて、花見で一杯と行きたいですね。
さて、さっそくですが今回はPDDについてお話したいと思います。



写真 1 典型的な趾皮膚炎の病変



写真 2 毛のような皮膚の増殖を伴った趾皮膚炎

PDDはPapillomatous=いぼ状のできもの、Digital=指や趾、Dermatitis=皮膚炎の頭文字をとったもので、日本語では、いぼ状皮膚炎とか趾皮膚炎と訳されます。またDDと略されている本も有ります。(写真1、2)
PDDは1970年代にイタリアで初めて報告された蹄病で、その後全世界に広まり最近では日本全国に広まってしまいましたが、私が就職した17年くらい前には宗谷ではほとんど発生が見られず(私が不勉強だったせいかもしれません)、その後数年で一気に広がってきたという印象があります。その就職当時、オホーツク方面の同期の獣医師から『趾皮膚炎って知っているか?大して酷そうな病変ではないんだけど、痛みがすごくてしかも伝染性がすごい蹄病があるんだぞ。まだ見たことないならオホーツク方面の牛を導入するときは気をつけた方がいいぞ。』なんて言われたのを未だに覚えています。(オホーツクの方々ごめんなさい。)
このようにPDDは伝染力が非常に強く、PDDに罹患した牛を導入することにより汚染された土壌やスラリーを介して、牛から牛へと感染が広がっていきます。また、痛みも非常に強くPDDに罹患した牛は乳量が30~45%減少するという報告も有ります。



写真 3 趾皮膚炎の顕微鏡画像(糸くず状に見えるものがトレポネーマ)

PDDの原因菌については未だにはっきりしてはいませんが、トレポネーマと言う細菌が病変の形成の主役を担っていると考えられています。(写真3)

トレポネーマは人の歯周病の原因菌と類似していると言われており、どちらも慢性の炎症を起こす細菌という点でも共通しています。ただPDDはトレポネーマ単独で起こるものではなく、ある環境下で他の細菌と競合して発症させると言われています。つまり不衛生でドロドロの牛床では蹄球や趾間にスラリーがこびりつきます。そうすると趾の皮膚はスラリーの水分やアンモニアでふやけたり、細菌で傷んだりします。そこにスラリーの中で増殖したトレポネーマが傷から侵入し病変を形成するのです。
ここで重要なのはすべての牛が同じ環境にいたからといって、同様に発症する訳ではないということです。その環境にいる牛の免疫状態や乳期、年齢などにより発症のしやすさが決まるらしく、一般に初産牛が最も発症しやすいと言われています。
また正常な牛の皮膚には外界から感染を守るバリアー機能があります。勿論このバリアーは趾皮膚にもあるため、健康な牛にはトレポネーマを感染させてもPDDは発症させることはできません。このバリアーにはビタミン(代表的なものとしてビタミンHといわれるビオチン)や微量ミネラル(亜鉛など)によって維持されています。このビオチンは亜鉛と競合して爪や皮膚などの蛋白質を合成するという重要な役割を担っています。牛の場合はビオチンに限らずビタミンの多くをルーメン内の細菌が作り出すことができます。しかし牛がルーメンアシドーシスになり、ルーメン内の細菌が減少している場合にはビオチンが作られずこのバリアー機能を発揮させることができません。つまり容易にトレポネーマの感染が成立するという訳です。さらにルーメンアシドーシスによる軟便はトレポネーマの増殖しやすい環境を作りやすくしてしまいます。やはり牛のルーメンアシドーシスは百害あって一利無しって事ですね。

次回もPDDについてお話します。


今回の写真はテレビドクター3から引用させていただきました。

by とある獣医師

牛の嗅覚、知っていましたか?


ウシの嗅覚が鋭いのはご存知でしたか!?
嗅覚の鋭い動物といえば犬を思いつきますが、実はウシも凄いんです!!
嗅覚と味覚は人でもウシでも強い関連があると言われています。

ヒトは自分の好きなものを好きなだけ食べることができますが、
ウシは自由に選べません。

ヒト:寿司、ステーキ、お酒・・・・・・・
ウシ:乾草、配合飼料、水

ウシは来る日も来る日も…乾草、配合飼料、水です。
でもこのメニューでも草食動物のウシは毎日大好物、おいしく食べています。

さらに泌乳中のよく働いているウシはいつもお腹がペコペコ。
なので余程のことがない限り好き嫌いでエサを残すことはないのです。

でもウシがエサを残すことがあります。
・エサにカビが生えている
・乾草の茎が硬過ぎる
・乾草の中の硝酸態窒素が多い時

などです。

いつもお腹が減っているウシでも、臭いに敏感だからこそニオイも味も悪いエサは食欲を左右してしまいます。
とてもデリケートな動物なのをあらためて実感します。

これまではウシが嗅覚に敏感とは知らなかったので、気にはしていませんでしたが、
もしかすると牛舎に入っただけで削蹄師独特のにおいを嗅ぎ分けているのかもしれません。
「お!今日は削蹄師が来たぞ!」と。

そう思うとこれからはウシ達にも「この臭いの削蹄師はイイ仕事するよね!」と思われる削蹄を目指したいです!

by EITARO(sato)

参考文献:全国酪農協会
写真素材:【丑】牛のイラスト画像【かわいい牛のイラスト】

2014-3-31 Category コラム, 牛コラム | Leave a Comment

牛の聴覚

牛の聴力は最小可聴音が8,000Hz以上と、人に比べてかなり高い音が聞こえます。
大体1,000Hzぐらいが聞き易いみたいです。
でも、どうやってこれを測定したんでしょうか?
人だったら、「聞こえたら合図してください」って言えますけれど、牛の場合は難しいですよね・・・・・
昔は、音を聞かせて、耳が動くか動かないかで、判断していたそうです。
今は、音が鳴ったら、餌がもらえると いうことを学習させて、餌をもらいに来たら、聞こえていると判断するそうです。
大変ですね・・・・・・



写真素材:GATAG|フリー画像・写真素材集 3.0
参考文献:じゃーじ牛のホームページ

bySAGA

2014-3-23 Category コラム, 牛コラム | Leave a Comment

センチュリー誌に掲載されました

日本で活躍している中小企業を紹介している、ビジネス雑誌「センチュリー誌」

その、センチュリー誌に別海町の酒井削蹄業の酒井博昭氏が掲載されました。







月間企業情報雑誌センチュリー
by RIMU

2014-3-13 Category コラム, 削蹄師会 | Leave a Comment

とある獣医師の独り言13

私の住んでいるところは今年の雪は例年より少なく、国道の通行止めもまだ一度もなく平和な冬を過ごさせていただいておりますが、皆さんの住んでいるところはいかがでしょうか?春が待ち遠しいですね。


写真 1 趾間過形成

さっそく趾間の病気についてお話していきます。まずは趾間過形成(しかんかけいせい)です。趾間結節(しかんけっせつ)とも言われます。内外側の軸側の蹄壁とくっついている皮膚には小さな襞(ひだ)があり、それが慢性的に刺激され続けると皮膚が肥厚し盛り上がってきて写真1のような状態になるのが過形成です。ですから盛り上がっているのは皮膚の一部なので趾間皮膚過形成といってもいいと思います。その刺激の原因として趾間に糞や異物が詰まる事や趾間の軽度の細菌感染にあります。そのため蹄浴や蹄の洗浄で趾間をきれいに保つ事がもっとも大切です。


写真 2 過形成の切除

治療法は小さい過形成であれば削蹄により趾間の隙間を広げてあげることで徐々に小さくなりますが、大きな過形成の場合には写真2のように外科的に切除する必要があります。

次に趾間腐爛(しかんふらん)についてです。これは趾間がFusobacterium necrophorumという菌 (日本語では壊死桿菌(えしかんきん)と言われます)に感染にすることにより起こります。この菌は空気のあるところでは増殖できないので、まず趾間に傷ができることが発端です。たとえば木の枝や石によってできる小さな傷、または物理的に趾間が広げられてできた裂け傷などから菌が侵入しそこで増殖することで趾間腐爛が発症します。ですから成乳牛のみならず公共牧場で預託されている育成牛でもよくみられます。急激に跛行を示す牛が増えた時には趾間腐爛かPDDを疑うべきでしょう。特に長雨の後では要注意です。雨で放牧地の表面の土が流れ、尖った石が趾間を傷つけることにより複数頭に趾間腐爛の発症が見られることもよく有ります。


写真 3 趾間腐爛による蹄冠の腫脹


写真 4 趾間腐爛による趾間皮膚の裂け目

趾間腐爛の特徴は写真3で見られるような蹄冠部の腫脹です。発症初期は小さな傷なので蹄を挙げても趾間腐爛だと気付かない事も有ります。少し時間がたつと中に溜まった膿が自潰(じかい)し写真4のようになります。


写真 5 趾間過形成と趾間腐爛の合併症

また趾間過形成と合併して起こるようなことも有ります。過形成と趾間の間にできる擦り傷から壊死桿菌が感染し写真5のような二次的な趾間腐爛が出来上がります。
趾間腐爛の治療としては早期の場合は抗生物質が非常に有効です。ペニシリンの全身投与を数日実施するのが一番です。それと同時に趾間の壊死組織(えしそしき)の除去と消毒をおこなうのがよいでしょう。ただし、発見が遅くなった場合には壊死桿菌が趾間から軸側の蹄壁へ侵入し蹄球部から蹄底へ化膿が波及する場合も有ります。その場合は抗生物質の全身投与と並行して、蹄底潰瘍と同様に浮いている角質をすべて削切する必要があり、治癒には時間がかかることになります。特に蹄関節へ腐乱が侵入した場合には予後は非常に悪くなります。すべての病気に言えることですが、早期発見、早期治療が肝です。

次回は趾間の病気のPDDについてお話します。


今回の写真も牛のフットケアガイドから引用させていただきました。

by とある獣医師

人間とウシの骨の数は?

人間とウシの骨の本数は何本違うでしょうか。
人間:200~206個
ウシ:227~229個
ウシのほうが多いですね。

ちなみに、哺乳類の首の骨は、基本的に7個と一定しています。従って、ウシ、キリン、ヒトの首の骨の数は、みんな同じ7個です。
あの長い首のキリンと人間が同じ数というのは意外ですね!

by EITARO(sato)

参考文献:ウシの骨格 Skeleton of Cattle
写真素材:DH | Photography

2014-2-27 Category コラム, 牛コラム | Leave a Comment

牛と塩のお話し

牛の餌は主に牧草ですが、牧草に含まれていない塩分やミネラルの補給も大切です。

塩と必要ミネラルを硬く固形状にした「鉱塩」。
餌とセットで牛が補給できるように置かれています。

鉱塩にも種類があり、ビタミンEの分量違いなどで牛の栄養をコントロールできます。
牛舎内にはこの四角い塊がありますよ^^

by SAGA

ゼノアック 鉱塩E100TZ

2014-2-21 Category コラム, 牛コラム | Leave a Comment

「北の蹄 第48号」発行になりました

北海道牛削蹄師会の会誌「北の蹄 48号」が発行になりました。
内容は昨年開催された海外悪性伝染病防疫研修会の様子や、フォトニュースなどです。

by WASHIMI









2014-2-14 Category コラム, 削蹄師会 | Leave a Comment

とある獣医師の独り言12

今回は蹄底潰瘍の治療についてお話しします。蹄底潰瘍の治療には先月も少しお話しましたが、患部のみを除去しても蹄骨による蹄真皮の圧迫の原因を除去しなくては治りません。

一昔前は蹄底潰瘍の治療は馬の治療を応用し、『患部に穴を開け排膿させる』という方法が一般的でした。この方法は確かに蹄壁で体重を支えている馬には有効です。(馬は排膿させるだけで治ることが多く、蹄壁は削ってはいけないそうです。)一方、牛は排膿させるだけや、潰瘍の部分をすり鉢状にくり抜くだけでは治りません。その理由は牛の体重は蹄壁で支えるのではなく蹄底全体で支えているからです。


【写真1 肉芽の突出】


【図1 蹄球枕の位置】

蹄底潰瘍の治療経過で(写真1)の矢印のように肉芽が飛び出てくるのを見たことはありませんか?飛び出す原因は牛の蹄の構造にあります。このコラムの3話でもお話しましたが、牛の蹄は蹄底の後2/3の部分には蹄球枕というクッション装置があります(図1)。

蹄底潰瘍によって形成された浮いた角質のみをすり鉢状に削ると、蹄球は部分的に残ります。するとその残った蹄球部に体重が掛かり蹄真皮内部の蹄球枕は圧縮され、その圧力は一番薄い病変部の穴から肉芽となり飛び出してくるのです。この肉芽が飛び出した状態では傷はいつまでも治りません。




【図2 ヒールレステクニック】

そこで蹄球に負重がかからない処置=ヒールレス(かかとを無くす)テクニック(図2)が必要となるわけです。





【図3 ヒールレスの削切部位】

それでは蹄底潰瘍に対するヒールレスについて簡単に説明していきましょう。まずは潰瘍によって形成された坑道(浮いている角質)をすべて削切します。そして軸側蹄壁の始まる部分から先の1/3を残して蹄球は削ります。(図3参照)その後傷をよく洗浄し、感染させないように被覆材で覆い、包帯を巻きます。

これらの処置によって蹄球が免重できるうえにさらに蹄骨の先端の方へ負重が移動するため蹄骨の後端による蹄真皮の圧迫も緩和され潰瘍の治癒の促進にもなります。

ただし、何らかの原因(遺伝による球節の沈下、ルーメンアシドーシスによる屈腱の伸び、長期にわたる削蹄の不備による蹄の変形など)で蹄球部の角質が異常に薄くヒールレスにできない場合には反対側の蹄に蹄ブロック(下駄)をつけて罹患蹄を浮かせて、患部を免重するようにする方法も非常に有効です。

ここで注意しなくてはいけない点は、蹄ブロックを長期にわたり装着したままだと、装着した側の蹄に荷重がかかり蹄底潰瘍になるケースが多くみられるため、治療が終了してから1~2週後にはブロックを除去するべきだとおもいます。

このように蹄底潰瘍の治療には蹄球部の免重が一番重要というわけです。
次回は趾間の蹄病についてお話します。

(図2)は牛の跛行マニュアルから、ほかは牛のフットケアガイドか引用させていただきました。

by とある獣医師

砥石の紹介

前回のコラムでは削蹄工具の鋼の話題がありました。
鋼なので定期的に砥石を使い研ぐメンテナンスが必要となります。
これまで様々な砥石を使ってきましたが、満足度の高い砥石を今回紹介します。


シャプトン社の「刃の黒幕」シリーズです。
セラミック砥石のトップブランドで、砥石の減りが少なく、長時間水に浸けることなくすぐに研げるのが特徴です。
種類も多く揃っており、お気に入りのアイテムです^^
より良い砥石をお探しの方はぜひ!

リンク:シャプトン株式会社

by EITARO(sato)

2014-1-31 Category コラム, 当社 | Leave a Comment

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