北北海道を牛柄トラックで駆ける牛削蹄所。菅原道北削蹄所のオフィシャルサイトです。

とある獣医師の独り言28

6月ですね。今月の中過ぎにはここ宗谷でも草刈りが始まります。今年の天気はどうなんでしょうか。この時期の天気が今後一年間の乳量や病気の発生に大きく影響する訳ですから、何とか晴天が続いてくれる事を祈るばかりです。
前回はケトーシスとは何かについてお話ししました。今月はもう少しケトン体が産生される過程を詳しくお話ししていきます。

ケトン体はなぜできるのか
ケトン体は牛だけが作る物質ではありません。人間も作るし、肉食獣であるネコやイヌも地球上のほとんどすべての動物が作り出す物質です。動物が飢え死にしないように取る、自己防御手段の一つです。
太古の昔から動物は飢餓との戦いでした。人も現在のように一日三食ご飯が食べられるわけでもなく、牛も家畜になる前はサイレージや配合飼料が毎日お腹いっぱい食べられるわけではありませんでした。ですから、いつもより多く食べられた時に余ったタンパク質やブドウ糖を貯蔵に最も適した脂肪の形として内臓や皮下に溜めることを覚えました。油は筋肉や砂糖より燃えやすい事を考えると、いかに効率が良い貯蔵かがわかると思います。
一方、食べられない時には、肝臓で筋肉を分解してできたアミノ酸を変換してブドウ糖を作る糖新生を行い全身で利用するということを獲得しました。ですから、飢餓の時、動物は痩せてはいきますが、数日食べなくても生きていけるわけです。この過程で出来るのがケトン体です。
どのようにケトン体はできるのか?糖新生を行うにはエネルギーが必要です。このエネルギーを作り出すのが脂肪の分解です。体中から脂肪は肝臓に入り分解され脂肪酸になり、脂肪酸がさらに分解される時にできるアセチルCoA と言う副産物がケトーシスの原因物質ケトン体になるわけです。しかしケトン体は全くの悪ではありません。ケトン体は飢餓状態時の脳の唯一のエネルギー源として使用されるからです。 しかし飢餓状態が長引き、脂肪の分解が過剰になると、ケトン体は利用されずケトーシスと言われる病態に移っていくわけです。
では、なぜケトーシスになると食べないのでしょうか?ケトン体はアセト酢酸、βヒドロキシ酪酸と言うように酸が付いていることからもわかるように酸性物質です(ケトン体のうちのアセトンは別です)。ですから体のpHは酸性に傾き、アシドーシスになるわけです。これをケトアシドーシスと言います。アシドーシスになっては食欲が低下するのもわかりますよね。人もケトーシスになるそうですが、その典型は糖尿病だそうです。糖尿病では糖が吸収されないため、体は極度の飢餓状態になるため、人でもケトアシドーシスになるそうです。
今月はこのくらいにしておきます。
お付き合いありがとうございました。

第1回 道北護蹄会開催報告

平成27年5月23日(土)浜頓別会場 NOSAI中部支所 24日(日)名寄会場 駅前交流プラザよろーな 会議室で12:00~
第1回道北護蹄会フットケアミーティングが開催されました。


『アシドーシス 牛の消化について考える』
宗谷地区NOSAI中部支所 獣医師 塚田隆興 氏(道北護蹄会 副会長)


『日々の蹄治療 ~実例からの考察~』
(有)なかとんべつ動物病院 獣医師 木内彰 氏(道北護蹄会 会長)





多くの方ご参加ありがとうございました。

by RIMU

~世界の牛~

乳牛

ホルスタイン
英名】Holstein
【分布】世界中
【体高】オス160cm/ メス141cm
【体重】オス1,100kg/ メス650kg
【平均年間乳量】約7,300kg
【乳脂肪分】約3.9%
【備考】
・欧州では肉乳両方を目的として肥育されている
・アメリカ、カナダでは角張っており乳量が多い
・雄子牛は昭和40年代から牛肉生産のために肥育され、国産牛肉の2/3が肉牛として生産

ジャージー
【英名】Jersey
【分布】世界中
【体高】オス140cm/ メス130cm
【体重】オス700kg/ メス400kg
【平均年間乳量】5,700kg
【乳脂肪分】約5.0%
【備考】
・ホルスタイン程ではないが、世界中に広く分布
・デンマーク、ニュージーランド等では最重要品種

ブラウンスイス
【英名】Brown Swiss
【分布】スイス
【体高】オス145cm/ メス130cm
【体重】オス900kg/ メス550kg
【平均年間乳量】5,700kg
【乳脂肪分】約5.0%
【備考】
・寒さに強い牛
・年間乳量はジャージーと同じ

ガーンジー
【英名】Guernsey
【分布】イギリスのガーンジー諸島
【備考】
・乳脂肪分は一般的な乳牛よりも高く、1頭あたりの搾乳量が約半分と少ないのが特徴
・日本における飼養頭数は稀少
・性質の温和な乳牛
・バターやチーズ用によく合った乳質

エアシャー
【英名】Ayrshire
【分布】イギリス
【体高】オス145cm/ メス130cm
【体重】オス900kg/ メス550kg
【平均年間乳量】約4500kg
【乳脂肪分】約3.9%
【備考】
・貧しい草地と厳しい気候条件の原産地で育てられたため、体質は強健
・チーズ原料乳として最適
・耐寒性に優れ、粗放な飼養管理にもよく耐えるため、高緯度の地域で比較的多く飼われる

草原紅牛
【分布】中国

肉牛(国内)

見島牛
【分布】山口県
【体長】オス130cm/ メス113cm
【体重】オス488kg/ メス257kg
【備考】
・見島牛は外国種の影響を全く受けていない在来和牛の唯一の牛
・見島牛の雄とホルスタインの雌の交配による一代雑種 (F1) に見蘭牛がある

口之島牛
【分布】鹿児島県
【体重】オス約500Kg
【備考】
・日本で唯一の野生牛の品種
・トカラ牛の俗称を持っている
・鹿児島県鹿児島郡十島村、トカラ列島北端の口之島に棲息
・体格は非常に小さい

黒毛和種
英名】Japanese Black Cattle
【分布】日本
【体高】オス137cm/ メス130cm
【体重】オス940㎏/ メス560㎏
【備考】
我が国の肉専用種の約86%を占める

褐毛和種
【英名】Japanese Brown
【分布】日本
【体高】オス140cm/ メス133cm
【体重】オス950㎏/ メス600㎏
【備考】
・増体性に優れ、放牧適正が高い
・熊本県や高知県で飼養が多い

日本短角種
【英名】Japanese-Shorthorn
【分布】日本
【体高】オス137cm/ メス132cm
【体重】オス950㎏/ メス590kg前後
【備考】
・手間がかからず成長が早い品種
・主に東北地方で飼育

無角和種
【分布】日本
【体長】メス128cm
【体重】オス980㎏/ メス600㎏
【備考】
・主産地は山口県
・近年、無角和種の牛は少なくなっている

肉牛(海外)

アバディーンアンガス
【分布】イギリス
【体高】オス130cm/ メス120cm
【体重】オス800kg/ メス550kg
【備考】
・アバディーンアンガス種を略してアンガス種
と呼ぶ
・全飼養牛の約7%を占めている

ヘレフォード
【英名】Hereford
【分布】イギリス
【体高】オス137cm/ メス130cm
【体重】オス約1000㎏/ メス500-700㎏
【備考】
・世界3大肉用種と称される
・世界飼養頭数の20%余を占めている

シンメンタール
【分布】スイス西部のシンメンタール谷
【体高】オス155cm/ メス140cm
【体重】オス1150~1250kg/ メス750~800kg
【備考】
・乳肉兼用種
・スイスを中心にフランス、オーストリア、ドイツ、イタリア、チェコ、イギリス、アメリカ、オーストラリアなどで飼育

マレーグレイ
【英名】Murray-Grey
【分布】オーストラリア
【体高】オス135cm/ メス125cm
【体重】オス800kg/ メス550kg
【備考】
ショートホーンとアバディーンアンガスの交配によって20世紀に入ってから作出された新しい肉用種

ブラーマン
【英名】Brahman
【分布】アメリカ南部
【体高】オス140cm/ メス130cm
【体重】オス800kg/ メス500kg
【備考】
・粗悪な飼料条件に耐えることが最大の特徴
・産肉能力が高い

ドラウト
【英名】Drought-Master
【分布】オーストラリア北部
【体高】オス1.4m/ メス1.3m
【体重】オス800kg/ メス550kg
【備考】
・疫病性が高い
・耐暑性、耐粗飼料性に富む

ブランガス
【英名】brangus 
【分布】アメリカ
【備考】
アメリカ南部の州にある、農務省の試験場や民間牧場において作出したもの

韓牛
【学名】Bos taurus coreanae
【備考】
・朝鮮牛を韓牛という
・モンゴル、中央アジアなどで家畜化されていた牛が源流との説

シャロレー
英名】Charolai
【分布】フランスシャロレー地方
【体高】オス142cm/ メス132cm
【体重】オス1140kg/ メス735kg
【備考】
・フランスで最古の肉牛
・日本での飼養頭数は少ない

ウシの仲間

水牛
【学名】Bubalus arnee
【英名】Water buffalo
【分布】南アジア
【体長】240-300cm
【肩高】150-190cm
【尾長】60-100
【体重】700-1,200kg
【備考】
・インド、タイ、ネパール、バングラデシュ、ミャンマーに自然分布
・有史以前はアフリカ大陸北部から黄河周辺にかけて分布

アジアスイギュウ
学名】Bubalus arnee
【英名】Indian Water Buffalo
【分布】インド/ネパール/バングラディッシュ
【体長】240-300cm
【尾長】60-100cm
【体重】700-1200kg
【備考】
・ウシのなかでもっとも大きい
・人間の生活を支える大切な家畜として世界中で活躍
・純粋な野生のアジアスイギュウがますます少なくなっている
・異名『インドスイギュウ』

アフリカスイギュウ
【学名】Syncerus caffer
【英名】African buffalo
【分布】アフリカ
【体長】200-300cm
【肩高】140-180cm
【体重】オス600-900kg/ メス400-600kg
【備考】
・基亜種はサバンナ、亜種アカスイギュウは森林に生息
・100頭以上の群れを形成して生活し、多いときには1000-2000頭にもなる大規模な群れを形成

ヤク
【学名】Bos grunniens
【英名】Yak
【分布】インド北西部/中華人民共和国/パキスタン北東部
【体長】オス280-325cm/ メス200-220cm
【肩高】オス170-200cm/ メス150-160cm
【尾長】オス80-100cm/ メス60-75cm
【角長】92cm
【体重】オス800-1,000kg/ メス325-360kg
【備考】
・鳴き声は低いうなり声だがウシの様に「モー」とは鳴かない
・標高4,000-6,000メートルにある草原、ツンドラ、岩場などに生息
・日本ではヤクの尾毛は兜や槍につける装飾品として武士階級に愛好された

アメリカンバイソン
【学名】Bison bison
【英名】American bison
【分布】アメリカ合衆国/カナダ
【体長】240-380cm
【肩高】200cm
【角長】50cm
【体重】500-1100kg
【備考】
・基亜種は草原に、亜種シンリンバイソンは森林に生息
・オス同士で糞尿の上を転げ回り臭いをまとわりつかせて威嚇したり、突進して角を突き合わせる等して激しく争う

ヨーロッパバイソン
【学名】Bison bonasus 
【英名】Wisent,European bison
【分布】ポーランド
【体長】オス250-350cm/ メス220-280cm
【肩高】オス150-200cm/ メス140-170cm
【尾長】オス50-110cm/ メス45-100cm
【体重】オス650-1,350kg/ メス430-700kg
【備考】
・以前はヨーロッパ西部からレナ川以西まで分布
・開けた森林やステップに生息
・オスは単独で生活するが、若いメスのみで群れを形成

ステップ・バイソン
【学名】Bison priscus
【英名】Steppe Bison
【分布】ヨーロッパ/中央アジア/ベーリング地峡/北米
【体高】2m
【角長】50cm程度
【備考】
・草原地帯で発見
・ラスコーなどの洞窟壁画に、ステップバイソンが描かれている

瘤牛
【学名】Bos primigenius indicus
【英名】Zebu,Humped cattle,Indicus cattle
【和名】ゴブウシ
【分布】熱帯地方を中心
【体長】110cm
【備考】
・耐暑性があり、熱帯性の病気や害虫に対する抵抗力が強い
・ゼビュー(ゼブー)、ゼビューウシとも呼ばれる
・熱帯地方を中心に、南アジア、アフリカ、マダガスカル、フィリピン、インドネシア、インドシナ半島、近東で飼育
・近年では北アメリカや南アメリカにも導入

オグロヌー
【学名】Wildebeest
【英名】Gnu
【分布】ケニア以南のアフリカ中南部
【体長】180-240cm
【肩高】125-145cm
【体重】150-270kg
【備考】
ケニア、タンザニア、南アフリカ等のサバンナや半砂漠地帯に散在

オーロックス
【学名】Bos primigenius
【英名】Aurochs、Urus
【体長】約250-310cm
【角長】80cm
【体重】約600- 1000kg
【備考】
・およそ200万年前にインド周辺で進化したと考えられている
・第四紀初頭のうちに中東に分布を広げ、ヨーロッパに到達
・1万1000年前までには、ヨーロッパ・アジア・北アフリカなどの広い範囲に分布
・1627年に死亡が確認され、オーロックスは絶滅

ガウル
【学名】Bos gaurus Smith
【英名】Gaur
【分布】南アジア/東南アジア
【体長】240-330cm
【肩高】160-220cm
【尾長】70-105cm
【体重】580-1,000kg
【備考】
・インド/カンボジア/タイ/中華人民共和国(雲南省)/ネパール/ミャンマーに分布
・標高1800メートル周辺にある森林に生息
・8-11頭ほどの群れを形成し生活する

サラオ
【学名】PseudooryxnghetinhensisDung,GiaoChinh,Touc, Arctander & MacKinnon
【英名】Saola Vu Quang ox
【分布】ベトナム西部/ラオス東部
【体長】150-200cm
【肩高】80-90cm
【尾長】13cm
【角長】32-52cm
【体重】90kg
【備考】
・別名ベトナムレイヨウ
・名前は生息地で「細長い角」の意味
・山地の斜面にある森林に生息。夏季は標高2,000メートル前後の場所に生息するが、冬季になると標高の低い場所へ移動

コープレイ
【学名】Bos sauveli Urbain
【英名】Grey ox Kouprey
【分布】カンボジア
【肩高】200cm
【体重】900kg
【備考】
・1937年にカンボジアで初めて発見
・カンボジア北部、ラオス南部、ベトナム西部、タイ東部の森林に分布していた。しかし2007年ではカンボジアに約 250 頭が生息するのみと推測され、絶滅が危惧される

バンテン
【学名】Bos javanicus d’Alton
【英名】Banteng
【分布】東南アジア
【体長】180-225cm
【肩高】130-190cm
【尾長】65-70cm
【体重】400-900kg
【備考】
・インドネシア(ジャワ島、ボルネオ島)/カンボジア/タイ/マレーシア/ミャンマー/ラオスに分布
・オーストラリア北部にも移入
・夜行性

ケープバッファロー
【学名】Syncerus caffer caffer
【英名】Cape Buffalo 
【分布】東アフリカや南部アフリカ及び西アフリカ
【体長】240-340cm
【肩高】135-170cm
【尾長】75-110cm
【角長】50-150cm
【体重】425-870kg
【備考】
・サバンナや水辺近くの疎林に生息
・人間との事故も発生しており困った存在

オジロヌー
【学名】Connochaetes gnou
【英名】Black wildebeest,White-tailed gnu
【分布】スワジランド/ナミビア/南アフリカ共和国/レソト
【体長】170-220cm
【肩高】90-120cm
【尾長】80-100cm
【体重】160-180kg
【角長】53-74cm
【備考】
・草原に生息
・季節的な長距離移動は行わない


長くなりましたが…
以上です。
世界にはさまざまなウシさん達がいるんですね♪♪

最後まで見て頂きありがとうございます。

by RIMU

2015-5-26 Category コラム, 牛コラム | Leave a Comment

熱中症対策に運動と牛乳を!

5月だというのに、まだまだ肌寒く感じる北海道ですが、この夏、冷房に頼らずに熱中症を防ぐには、今の時期から軽い運動をして、その直後に牛乳を飲むことが効果的だという熱中症の予防指針が、医師などで作る学会によっての報告を拝見しました。
この報告は医師、スポーツ分野などの専門家で作る「日本生気象学会」がまとめたもので、夏の暑さにどのように備え、対応すべきかをまとめているものでした。
暑さに備える工夫として、5月、6月から、汗ばむ程度の運動を一日30分行い、その直後に牛乳など糖質とたんぱく質を含む食品を摂取するよう呼びかけています。
それを、週に4日以上、1か月行うと、血液量が増えるために汗をかきやすくなって、暑さに強い体を作ることができるとしています。
「暑さに強い体になれば、エアコンを使うことも少なくなり、暑いということをあまり感じなくなる。涼しい今の時期から、運動と乳製品で暑さに強い体を作ってほしい」と日本生気象学会は話しています。
是非、今から運動と牛乳を!!

photo by sugaWara

2015-5-18 Category コラム, 牛コラム | Leave a Comment

とある獣医師の独り言27

ゴールデンウイークです。異常に暖かいですね。ここ宗谷でももう桜が咲きました。宗谷に来て今年で18回目の春を迎えますがこの時期に桜が咲いたのは異常な早さです。どうせならもう少し夏も暑くなればビールがおいしいんですけどね。

今月からはケトーシスについてお話ししていこうと思います。
さて皆さんケトーシスとは何でしょうか?当たり前のことですが、ケトン体が体内に過剰になる事をケトーシスと言います。普段酪農をなさっている農家の皆さんはもちろん酪農関係者の皆さんもケトーシスやケトン症と言う言葉を一度は耳にした事はあると思います。また、分娩後に泌乳が増えてエネルギー不足におちいるとケトーシスになると言う事を分かっている方もいっぱいいらっしゃると思います。しかし、そもそもケトン体とは何でしょうか?どこから出てくるのでしょうか?さらに、ケトーシスになるとなぜ食べなくなるのでしょうか?『何を今更、そんな事分かってる』と言う方もいるかと思いますがそう言わず、ぜひお付き合いください。

ケトーシスとは何か
先ほども言いましたがケトン体が体に多量に循環する状態の事を言います。ではケトン体とは何でしょうか?それはβ(ベーター)-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸(アセトアセテート)、アセトンの3つの総称です。ではどのような経路で体内に出てくるのでしょうか?
 牛は人間と同じくブドウ糖をエネルギー源とします。(ブドウ糖の吸収の仕組みは人とは違いますが、体を維持するのに使うエネルギー源は人と同じブドウ糖です。)しかし牛は分娩とともに莫大な量の泌乳をするため、採食で得られるエネルギーよりも多くのブドウ糖を必要とします。そこで足りないブドウ糖を筋肉などに蓄えているタンパク質を分解してまかないます。これを糖新生と言います。その糖新生に必要なエネルギー源として利用されるのが体脂肪です。具体的には体脂肪を分解し脂肪酸を作りこの脂肪酸をβかしてアセチルCoA(コーエー)を取り出し、TCAサイクルを回して…などと書いていくと何の事だかわかんなくなると思いますので、簡単に言ってしまえば、糖新生の際の体脂肪利用の副産物がケトン体です。
ケトン体として始めにできるのがβ-ヒドロキシ酪酸です。往診に来た獣医さんが乳汁やおしっこでケトン体を量っているのはこのβ-ヒドロキシ酪酸です。それが肝臓のミトコンドリアで分解されるとアセト酢酸ができます。アセト酢酸は不安定な物質なのですぐにアセトンに変わります。このアセトンは揮発性が高くは呼気や皮膚から体の外に出ていきます。よく農家さんからの往診依頼でケトン臭がすると言われますがその原因はアセトンです。アセトン臭は柿やリンゴの熟した匂いとか甘酸っぱいにおいとか言われることが多いと思います。
余談ですが最近は糖質制限ダイエットが流行っていますが、頑張りすぎると人もケトン臭がするようになるそうです。医学の方ではケトン臭の事を飢餓臭とも言われるそうです。ダイエットはほどほどにしないと体臭がケトン臭くなりますよ。
 

今月は以上です。今月から独り言のコラムを少し短めにしてみました。このほうが読みやすいかなと思いまして…。決してネタ切れが怖い訳ではないですよ(笑)。
来月もお付き合いをよろしくお願いします。

byとある獣医師

平成27年度 北海道牛削蹄師会 通常総会開催

平成27年4月24日(金) 札幌の京王プラザホテルにて行われました。
総会前の削蹄研修会では、『今、現場で何が起こっているのか』と題しまして、
酪農学園大学 獣医学群 教授 小岩政照様より講演がありました。
総会終了後の祝賀会結びの挨拶は、今年も!!なんと当社の松原駿くん!!
去年と同様緊張していましたが、素晴らしい挨拶で締めて頂きました。











by RIMU

2015-4-30 Category コラム, 削蹄師会 | Leave a Comment

削蹄通信Vol.9号発行しました!



お待たせしました。
年2回発行の当社削蹄通信Vol.9を発行しました。

今回も牛の情報から当社の紹介まで充実の内容です。
順次畜主様、関係機関へお渡しとなりますのでよろしくお願いします!

by RIMU

2015-4-18 Category コラム, 当社 | Leave a Comment

削蹄通信Vol.9号発行しました!



お待たせしました。
年2回発行の当社削蹄通信Vol.9を発行しました。

今回も牛の情報から当社の紹介まで充実の内容です。
順次畜主様、関係機関へお渡しとなりますのでよろしくお願いします!

by RIMU

2015-4-18 Category 最新情報 | Leave a Comment

facebook始動開始!!

当社のfacebookが完成致しました!!
随時、更新中です!!



by RIMU

2015-4-16 Category コラム, 当社 | Leave a Comment

とある獣医師の独り言26

まず始めに先月のコラムに間違えがありました。
コラムの31行目の、『・・・好中球やキラーT細胞を増やすように支持を出した場合が液性免疫です。・・・』の液性免疫は細胞性免疫の間違えです。申し訳ありません。

新年度が始まりました。もう冬も終わりですかね。今年も昨年に続き雪が少なく春が早いような気がします。この宗谷地方でも草地の雪が完全に溶け、心なしか草が緑色をなしてきたような気がします。早く暖かくなってほしいですね。
さて先月に引き続き乾乳期の栄養と出生子牛の関係で今回は初乳です。

乾乳期の栄養と出生子牛の関係
③初乳
初乳には様々な子牛の生育に必要な物質が含まれています。

◎移行抗体
初乳摂取の一番の大きな役割は移行抗体の獲得です。では移行抗体とは何でしょうか?抗体とは先月お話ししたように細菌やウイルス(抗原)が体に侵入した時に、マクロファージとT細胞がB細胞に作らせる免疫物質です。抗原が二度目の侵入した時に、抗体は抗原に目印として付着します。そうすると白血球が抗原を発見しやすくするなり捕食しやすくなるわけです。やみくもに捕食するよりも効率が良いと言う事ですね。この抗体が胎盤を介して子牛に移行すれば子牛は出生直後から感染に対して強く生まれてくるはずです。しかし牛の胎盤は人とは異なり抗体を含めた分子量の大きなタンパク質は通る事が出来ない構造になっています。そのため牛は初乳に抗体を入れて子牛に摂取させるような仕組みを取りました。ですから新生子牛は初乳を摂取することによってはじめて免疫力を獲得することができるわけです。ただしタンパク質は通常は分解されて吸収されますが、抗体は分解されては意味がありません。そこで新生子牛の小腸の細胞は呑込み作用(ピノサイトーシス)と言われる作用で抗体を丸呑みして吸収し、血液などに乗せて全身に届けます。ただしこの吸収作用は出生後6時間までがピークで24時間以降はほぼ無くなると言われています。この作用によって得られた抗体は子牛が自分で抗体を産生できるようになる2週間までの間、液性免疫の主体を担います。初乳に十分な量の抗体が入っていなかったり、何らかの理由によって十分な量の初乳を飲めなかった場合には免疫移行不全となり、死亡率が2倍以上になるとも報告されています。

◎白血球      
初乳にはマクロファージ、リンパ球などの母牛由来の白血球も含まれており、これも抗体同様子牛の消化管で消化されることなく血液中に入り、初期の細胞性免疫を増強する役割を持っています。また、マクロファージは腸管の粘液を刺激して液性免疫を活性化させる役割を持っています。

◎非特異的抗菌物質 
初乳にはラクトフェリンやリゾチームなどの広く抗菌作用を示す物質を含んでいます。ラクトフェリンは鉄を吸収することで細菌・ウイルスの発育を阻害し、腸内細菌のバランスを整える働きがあります。リゾチームは涙にも含まれる抗菌物質で細菌の細胞壁を融解することにより抗菌作用を示します。
 
その他にも出生後の子牛のタンパク源になるアルブミン、エネルギー源である脂肪・乳糖、またビタミンやミネラルも常乳の数倍から数十倍も含まれています。さらにはT細胞を活性化させる細胞間伝達物質の一つであるサイトカインや腸内細菌の栄養源であるオリゴ糖も含まれており、良質な初乳を適切な量を適切な時間に摂取することが感染に強い子牛を作る上で一番大事だと思います。 
初乳は分娩の一カ月前より乳腺で作られ始めると言われています。ですから乾乳期の母牛の栄養障害はこの面からみてもマイナスであることは間違えありません。


3回にわたり乾乳期の栄養と出生子牛の関係をお話ししてきました。
人の世界では『胎児期に低栄養状態であることが成人期に心血管障害のリスク因子になる』とする『バーカーの仮設』と言うのが最近支持されているようです。これは胎児の時期に栄養状態が悪いと成人になった時にいわゆる成人病になるリスクが高くなるというものです。これは人にのみ当てはまるわけではなく牛にも当てはまる可能性は高いと最近注目されてきています。乾乳期に母牛の栄養が不足すると、胎児の成長に悪影響を及ぼし、胎児の胸腺の形成不全による子牛虚弱症候群を引き起こし、出生してからも初乳の質の低下などから免疫移行不全となり虚弱な子牛が出来上がると言うわけです。この子牛は成牛になっても泌乳能力の低い牛や受胎率の悪い牛となり経営の為に長くは生きられないと言う事です。
どうですか?母牛の一年間の泌乳に係るのみならず、二年後の牧場の未来を担う胎児の為にも乾乳期の栄養管理をもう一度考えてみませんか?

今月もありがとうございました。

byとある獣医師

2024 菅原道北削蹄所|北北海道を幅広くエリアカバーする牛削蹄所です . | Blue Weed by Blog Oh! Blog