北北海道を牛柄トラックで駆ける牛削蹄所。菅原道北削蹄所のオフィシャルサイトです。

とある獣医師の独り言45



12月になってしまいました。フットケアミーティングの準備を言い訳にこのコラムを一か月さぼってしまいました。申し訳ありません。今月からまた一か月に一度更新できるように頑張っていきますので、お付き合いお願いします。
さて今月からは削蹄所のホームページにふさわしく、SARA(亜急性ルーメンアシドーシス)が引き起こす蹄への悪影響についてお話しします。蹄の疾患は様々ありますが、どの蹄病にも多かれ少なかれSARAは影響を与えます。その理由として考えられることは、1、栄養失調になること。2、ルーメン微生物の死滅による血行障害が起こること。3、ルーメン微生物のバランスが崩れること。4、軟便(下痢)になることがあげられます。

◎蹄に対するSARAが及ぼす悪影響

1、栄養失調
正常な牛はルーメンに生命維持に必要なエネルギー(ブドウ糖)の約70%とたんぱく質の約50%を依存しています。蹄を構成している主成分はたんぱく質であり、蹄を生成するための細胞分裂に必要なエネルギーはブドウ糖であることから、SARAになればまともな蹄を形成できなくなり、蹄疾患へとつながります。 

2、ルーメン微生物の死滅による血行障害
SARAはルーメン内が酸性化することにより、酸に弱い菌が大量に死滅します。死亡する菌の中には大腸菌の仲間も存在するために、血液中にエンドトキシンと言われる毒素が流出します。この毒素の特徴は血管を詰まらせることで血液の流れを阻害します。血液が流れなくなれば、蹄でまともな角質が作られることはなくなり、蹄疾患へとつながります。

3、ルーメン微生物のバランスが崩れる事
ルーメン内で酸に弱い菌が死滅し続けると、酸に強い乳酸産生菌:ストレプトコッカスボビス(レンサ球菌の一種)が増えていきます。この菌は大腸菌の仲間とは違いエンドトキシンは産生しませんが、エキソトキシンという別な毒素を産生します。難しい話は置いておいて、この毒素は角質と真皮の結合を破壊します。破壊された部分は出血を起こすことで様々な蹄病を引き起こします。

4、軟便(下痢)を起こす
SARAは消化管内で腸管を刺激するために下痢を引き起こします。牛群全体が下痢をすれば牛床は糞でドロドロとなり、蹄は水を吸い柔らかくなります。柔らかくなった角質では牛は正しく体重を支えることができず、蹄病の発生を招きます。さらにSARAの牛の便からPDDの菌が検出されたという報告もあります。ですから、SARAはPDDの蔓延にも大いに影響します。
このようにSARAと蹄病は密接な関係があることはわかっていただけると思います。
今月は以上です。来月から蹄の構造と蹄病の発生原因のおさらいをしながらSARAとの関係を見ていきたいと思います。
今月もお付き合いありがとうございました。

by とある獣医師

第58回全国牛削蹄競技大会

平成28年11月10日(木)茨城県水戸市鯉淵学園農業栄養専門学校様で
第58回全国牛削蹄競技大会が開催されました。

競技大会の成績は以下のとおりです。

『総合順位』
最優秀賞
武藤 稔貴(福島県装削蹄師会)

優秀賞
小川 和孝(鳥取県削蹄師会)

第3位
高田 和弘(北海道牛削蹄師会)

『 部門賞』
判断競技 優賞
小川 和孝(鳥取県削蹄師会)

牛削蹄競技 優賞
武藤 稔貴(福島県装削蹄師会)











選手はじめ関係者の皆様、大変お疲れ様でした。
by RIMU

2016-12-5 Category コラム, 削蹄師会 | Leave a Comment

とある獣医師の独り言44



いつの間にか10月です。今年も残り3か月となってしまいました。地球温暖化の影響なのか異常気象なのかわかりませんが、ついこの前やっと暖かくなったと思ったらもう冬の便りが届きました。稚内で初雪が降ったそうです。平年より15日も早く去年よりも18日も早いそうです。温暖化なら寒いのくらいはゆっくり来てくれればいいのにと思ってしまうのは私だけでしょうか。

本題です。今月はSARAが原因で起こる病気、第四胃変位です。

◎第四胃変位
第四胃変位(DAと略します)は第四胃が正常な位置(おなかの真下 へその少し前位)から右側もしくは左側へ移動してしまうことで、消化に影響をきたす病気です。発見が遅れると四胃が捻じれ、死亡することもあります。酪農家なら誰しも一度は経験する、乳牛の職業病ともいえる病気です。
DAは第四胃の弛緩(しかん 収縮できずに緩むこと)と四胃運動の抑制により四胃内にガスがたまることが直接の原因とされています。その四胃の弛緩や運動抑制の原因は様々あり、乳熱による低カルシウムや子宮炎も原因の一つと言われていますが、いまだにはっきりと解明はされていません。その中でSARA(亜急性ルーメンアシドーシス)も重要な発生原因の一つとされています。

1、VFAや乳酸による影響
SARAの条件下ではVFA(揮発性脂肪酸、プロピオン酸や酢酸)や乳酸が大量に発生します。これら酸性物質を希釈するためにルーメン内には大量の水が入り込むことで、ルーメンの内容物は水っぽくなります。さらに元々SARA下ではセンイが不足している(ルーメンマットが出来ない)こともこの状態に拍車をかけます。この水分過多となったルーメン内容物はルーメン内でとどまることができないため、高濃度のVFA、乳酸を含んだ状態で四胃に流れ込みます。これらの酸が四胃の運動を抑制することでDA発症の原因になります。

2、エンドトキシンの影響
SARA下ではルーメン微生物が死滅することでエンドトキシンが産生されるということはお話ししてきましたが、このエンドトキシンも腸管すべての運動を抑制する作用があるため、四胃にも作用しDAの発生原因になります。子宮炎原因菌は大腸菌であることが多いため、子宮炎とDAを併発していることがよく見られるのはこのせいかもしれません。
 
四胃にガスがたまったからと言ってすべてがDAを発生するわけではありません。発症するにはガスが張ってほかの臓器より軽くなった四胃が入り込むスペースがお腹の中にあるかどうかで決まります。ですから、出産によってお腹に隙間ができる分娩後や、食欲不振に陥ってルーメンが小さくなる事で隙間できるケトーシスや乳房炎はDAの発症に注意が必要です。

今月は以上です。お付き合いありがとうございました。

byとある獣医師

削蹄通信Vol.12号発行しました!



お待たせしました。
年2回発行の当社削蹄通信Vol.12を発行しました。

今回も牛の情報から当社の紹介まで充実の内容です。
順次畜主様、関係機関へお渡しとなりますのでよろしくお願いします!

by RIMU

2016-10-9 Category 最新情報 | Leave a Comment

とある獣医師の独り言43

九月になりました。暑い夏も台風と長雨で一気に秋の空気に変わってしまいました。ここからは一気に日が短くなり、寒くなる一方でなんだか寂しい感じになるのであまり好きな季節ではありません。実りの秋なので食べ物がおいしくなるのは良いですけどね。釣りにもいい時期になりますし。
本題です。今月もSARA(亜急性ルーメンアシドーシス)によってルーメン微生物が死亡することで引き起こされる病気の続きです。

◎繁殖障害
今までこのコラムではSARAになると、エネルギー不足とタンパク不足により栄養失調となることは何度もお話ししてきました。栄養失調の状態になると牛はまず先に自分の生命維持のためにエネルギーを使います。そして生命維持に使って残ったエネルギーを自分の子供のための牛乳を作る泌乳のエネルギーとして、それでもエネルギーが残っていて初めて子孫を残すために繁殖(発情)へとエネルギーを回すそうです。ですからSARAの状況下では繁殖障害になるのは当たり前と言ってしまえばそうなのですが、ルーメン微生物の死滅によるエンドトキシンによってさらに繁殖に悪影響を与えます。今回はそのお話しです。エンドトキシンは血液に取り込まれることによって様々な臓器に行くことはお話ししましたが、卵巣も例外ではありません。

写真1 牛の卵巣 下の写真には4個の卵胞がある

1、卵胞機能への影響
 卵巣の中には複数の卵胞があり卵胞液と一つの卵子が入っています。その卵胞液が発情や受胎に重要なホルモン、エストロジェンとプロジェステロンを分泌します。卵巣に到達したエンドトキシンはこれらのホルモンのバランスを崩すことよって発情を起こさないように働きます(鈍性発情あるいは無発情)。
2、卵子への影響
 卵子は卵胞の中で成熟することにより排卵し、授精によって子宮内で精子と結合することにより受精卵となります。しかし、卵巣内に入り込んだエンドトキシンは卵子を授精できるように成熟させるのを阻害します。つまりはエンドトキシンがあると卵子は成熟できなくなり、排卵できるような卵子に成熟できなくなるのです(卵子の発育障害)。
さらに受精卵は子宮から栄養を得るための栄養膜と呼ばれるものを伸ばすことで子宮に着床し核分裂を繰り返し胎児へと成長していきますが、ところがエンドトキシンは栄養膜を作るのを阻害することで着床にも悪影響を与えます(受精卵の着床障害)。

もちろんエンドトキシンSARAの時だけ出るものではありません。大腸菌性の乳房炎や産褥性の子宮炎の場合にはSARAの場合よりも多くのエンドトキシンが産生されます。エンドトキシンの量が多ければ多いほど繁殖に悪影響を与えるのは間違えありません。みなさんも経験があるかと思いますが、乳房炎や子宮蓄膿症に罹った牛はその後受胎が悪いのはこの影響もあるようです。エンドトキシンは怖いですね。
今月は以上です。お付き合いありがとうございました。


byとある獣医師

第23回北海道ブロック牛削蹄競技大会レポート

平成28年9月5日・6日の2日間にわたり帯広市 帯広畜産大学で開催された、第23回北海道ブロック牛削蹄競技大会。
フォトで大会の様子をお伝えします。





大会1日目は削蹄判断研修です。






削蹄研修を終えた後、交流会が行われました。










2日目は牛削蹄競技大会開催です。






































講習会が行われました。


いよいよ結果発表です。






単独保定の部
優勝 北見市 小林 優斗


枠場保定の部
優勝 士別市 渡辺 祐太


単独保定の部(写真左から)
優 勝 小林 優斗 (北見市)
準優勝 新 知幸(江別市)
3 位 高田 和弘(北見市)
4 位 渡部 晃大(七飯町)



最後に各部門優勝者の記念撮影です。
本当におめでとうございます!

by RIMU

2016-9-15 Category コラム, 削蹄師会 | Leave a Comment

御神輿の担ぎ手として参加しました!

9月3日に行われた美深神社例大祭。
今年も縁がありまして、当社全スタッフが御神輿を担がせていただきました。
その様子をレポートします。













無事に練り歩くことができました。
そしてとても楽しく参加させていただきました。

by Rimu

2016-9-12 Category コラム, 当社 | Leave a Comment

道北田島会&懇親会in名寄

平成28年8月13日(土)名寄市「なよろ健康の森」にて道北田島会を開催させていただきました♪
今年は、田島先生の奥様も御招きしパークゴルフ大会を開催しました。
一部ではございますが、ご紹介させていただきます。



田島先生の奥様


兵庫からお越しくださった当社、松原のお母様










宗谷地区NOSAI中部支所 塚田先生にもご参加いただきました。


結果発表です。
今回、3チームに分れパークゴルフを開催しました。
入賞者には豪華景品を用意しました。
優勝
当社、萩野、渡辺、田島先生の奥様でした。






田島先生からの超豪華景品♪




綿あめ職人の亮ちん




親睦会会長の締めの挨拶




byRIMU

2016-8-31 Category コラム, 当社 | Leave a Comment

とある獣医師の独り言42


8月です。ここ道北のオホーツク海側にしては異常な蒸し暑さが続いています。今年は暑い夏になるとアメリカ航空宇宙局(NASA)が発表したそうです。数年続いていたエルニーニョ現象が終息してラニーニャ現象が起きているそうです。ペルー沖の海水温が上がるのがエルニーニョ、下がるのがラニーニャだそうですが、ペルー沖の温度がなぜ日本に影響するのかは私には理解できませんが、暑い夏は個人的には大歓迎です。牛さんにはちょっと過酷かもし得ませんが、宗谷の暑さはそんなには長くは続かないはず。少しの間だけ我慢していただきましょう。それでは本題です。
数回にわたりSARA(亜急性ルーメンアシドーシス)が起こす病気について書いてきました。前回まではSARAが直接起こす病気についてお話ししましたが、他にもルーメン微生物が死滅することで発生しやすくなる病気もあります。今月からはそちらをお話ししていきます。

◎乳房炎
皆さんもご存じだとは思いますが、乳房炎は通常は乳頭口から細菌が侵入することにより乳房内で細菌が増殖し、乳房に炎症を起こす病気ですが、SARAの場合には別の要因で乳房炎が起こります。SARAによって過剰に作られた乳酸で酸性化したルーメン内では多数の微生物が死滅していきます。その死滅する微生物の中には大腸菌の仲間もたくさんいます。この大腸菌の仲間が持っている毒素をエンドトキシンと言います。死ぬ(エンド)と出る毒(トキシン)なのでエンドトキシンと呼ばれています。酪農家の方なら大腸菌の乳房炎は少なくとも一度は経験しているでしょうから、その毒素の強さはご存知でしょう。そのエンドトキシンはルーメンを出て、腸から吸収され血液に乗ります。エンドトキシンの毒性は末梢の血管に血栓(血の塊)を作ることによって血液を遮断することにあります。血液を遮断された臓器は栄養を得ることができなくなり、正常な働きをすることができなくなり部分的に壊死(えし)します。もちろんエンドトキシンは血液に乗り全身にめぐるので様々な臓器に影響を与えますが、乳房炎に関与する臓器は乳房と肝臓になります。

1.乳房への影響
エンドトキシンは乳房へ流れ、牛乳を作る乳腺細胞を破壊することで、牛乳中の体細胞の上昇を起こします。壊死した乳腺細胞では正常な牛乳を作ることができないため、体細胞が上昇してしまうのです。もし細菌検査をしても細菌が検出されないような場合は、SARAによる乳房炎の可能性があります。

2.肝臓への影響
もう一つはエンドトキシンが肝臓の細胞を破壊することで免疫機能が低下するために乳房の細菌感染を防御できなくなる場合です。肝膿瘍のところでもお話ししましたが、肝臓には大きく3つの役割があります。一つは代謝(摂取した栄養を体で利用できるようにする)、二つ目は胆汁(脂肪やたんぱく質の消化に関わる消化液)の排出、そして三つめは解毒になります。ウイルスや細菌の毒素、体内でできたアンモニアや摂取した毒物を無毒化することを解毒と言いますが、その役割を担っているのが肝臓です。また様々な免疫に関わるたんぱく質を作っているのも肝臓ですから肝機能が低下すると侵入してきたバイ菌に抵抗することができなくなり、乳房炎のリスクが高まります。もちろん乳房炎だけではなくあらゆる感染症に弱くなるため、肺炎に罹る牛も増えます。
さらに肝臓へのエンドトキシンの流入は肝臓の他の役割でもある代謝の低下や胆汁の排出の低下も招き、最終的には牛は栄養失調に陥ることでさらに病状は悪化していきます。

SARAの状態はルーメンで常にエンドトキシンがつくられ、それが体に吸収され続けるということですから、慢性の大腸菌性入乳房炎が起きているのと同じ状況です。絶対に避けるべき飼養管理だと思います。今月は以上です。
お付き合いありがとうございました。

byとある獣医師

第19回護蹄研究会 & 千葉県での削蹄

6月25日~26日(日)東京大学農学部にて
2016年度第19回護蹄研究会シンポジウムに参加してきました。


左、武田削蹄師   右、塚田獣医師と

2016.06.27~成田空港近くの牧場で上田指導級のお手伝いさせて頂きました。

現場終了後、成田山に


お世話になりました。
photo by sugaWara

2016-7-19 Category 講習会 | 1 Comment

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