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とある獣医師の独り言17

夏真っ盛りですね。実は私は釣りが趣味でして先日ブリを釣ってきました。まさかこんな道北であの青物のブリが釣れるとは全く思っていなかったのですが、どうやら海水温の変化で対馬暖流に乗った魚が日本海を北上し宗谷岬を回ってオホーツク海に来たようです。釣り人的にはようこそって感じですが、いたるところでゲリラ豪雨が降るようになったのも海水温の上昇によるとも言われているし、地球は本当に大丈夫なのか心配になりながらも次はマグロが釣れないかと期待をしている一釣り師でした。
では本題です。先月牛の生命維持にはルーメンが不可欠だという話をしてきましたが、ルーメンの中には細菌、原虫(プロトゾア、ミドリムシのような単細胞生物)、真菌(かび類)が無数に生息しています。ルーメンの容積を100リットルと仮定すると。細菌は1000兆個、原虫は100億個、真菌は10億個程度存在している計算になります。今月はルーメン微生物の代謝についてお話ししていこうと思います。
ルーメンの中で微生物は人間を含む他の生き物と同様に、生命活動に必要なエネルギーを得るためのエネルギー生成反応(異化代謝)と生体を構成する成分を合成する反応(同化代謝)を行っています。

① 異化代謝
異化代謝とは細胞に燃料を供給する反応で、これで生じたエネルギーは栄養の細胞内への取り込みや細胞成分の成長・分裂、細胞を維持するためのエネルギーとして使われます。この異化代謝をルーメンの中でルーメン微生物が行った場合、牛が食べた植物の構成成分であるセルロースやデンプンは異化代謝によってエネルギーとなり、残った分解産物は小さな分子へと変換されていきます。最終的には酢酸・酪酸・プロピオン酸などの揮発性脂肪酸(VFA)、二酸化炭素、メタンとなります。このVFAは先月もお話ししましたがルーメン壁から吸収されて牛のエネルギーとして利用され、二酸化炭素と水になります。言いかえると、ルーメン微生物が生きていくためのエネルギーを作った残り物が牛の大事なエネルギー源になっているわけです。

② 同化代謝
  同化代謝とは異化代謝の途中で生成された低分子などを素材とし、組み合わせることにより大きな構成成分(部品)を作り、最終的に微生物細胞その物を作り上げる反応のことです。同化代謝に利用する素材としてはタンパク質を分解することによって生成されたアミノ酸やアンモニア、低分子の糖質・脂肪酸などです。この異化代謝によって増殖したルーメン微生物は良質のタンパク源として小腸以下で吸収されて、牛の体の維持に利用されます。

つまり、ルーメン微生物がルーメン内で行っている事は、牛が食べた飼料を微生物自身の餌とし、異化代謝によりエネルギーと同化代謝の材料を獲得し、得られたエネルギーを使って微生物自体を組み立てる(増殖する)事なのです。また、個々のルーメン微生物は飼料に含まれるすべてを利用できるだけの能力はありません。しかし、多種多様なルーメン微生物がルーメンと言う限られた空間で生活することで、飼料中の多くの成分が分解されて微生物本体に再構築されていきます。このルーメン微生物の生命活動の総体がルーメン発酵です。牛が肉を食べなくてもあの大きな体を維持できる秘密はルーメン発酵にあったのです。

来月はさらに微生物をさらに掘り下げていきます。お付き合いありがとうございました。

by とある獣医師

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