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とある獣医師の独り言4

今回はアシドーシス繋がりで子牛のアシドーシスについてお話します。

親牛のアシドーシスは炭水化物の一胃での異常発酵および唾液による中和不全によっておこることは前回までに説明しましたが、哺乳している子牛には炭水化物は給与されていないのになぜアシドーシスになのでしょうか?

その発生要因は大きく二つに分けられます。一つは一胃にミルクが流れ込みミルクが異常発酵し乳酸が産生されるケースと、ミルクの消化吸収の過程が通常通り行われず腸管でミルクが異常発酵をおこすケースです。

まず始めに正常なミルクの消化吸収のされ方について簡単に説明します。親牛と違い子牛は食道と三胃の間に第二胃溝(食道溝)という溝が走っており、乳首でミルクを飲むことによりこの溝が閉じてストローの形となり、ミルクは第一胃・第二胃、三胃を素通りして四胃に到達します。(第二胃溝反射といいます)そこで四胃から分泌される消化酵素(レンニンまたはキモシンとも言います。)により凝乳しカードというミルクの塊とホエーという水分に分解されます。

牛乳からチーズが作られる過程と一緒ですね。分離されたホエーは初乳の時には特に重要で子牛の感染防御に欠かせない免疫グロブリンが大量に含まれています。そのグロブリンは四胃から速やかに流れ小腸で吸収され血流に乗り全身に行きわたります。このことにより細菌、ウイルスなどからの感染に対して無防備な生まれたての子牛を防御します。一方、塊となったミルクの栄養成分であるカードは固体になることにより液体のままのミルクよりもゆっくりと時間をかけることにより、異常発酵を受けずに吸収されていきます。これが正常なミルクの消化吸収の過程です。


ではなぜ一胃に流れるのでしょうか?いくつか原因があります。

① 食道カテーテルでの哺乳
子牛自らがミルクを飲まなかった場合にカテーテルを直接食道に入れて飲ませることがあると思います。しかしこれは第二胃溝反射が起こらないため一胃に流入しやすくなってしまいます。
② ミルクの温度・濃度
ミルクでは第二胃溝は起こりますが水では起こりません。この理由は何でしょうか?それは温度と濃度です。つまり加温不足のミルクや濃度が薄いミルクだった場合には一胃に流入する可能性が高くなります。
③ 哺乳の量
一度に大量のミルクを与えた場合には四胃から逆流が起こり一胃に流入することも有ります。体格の小さな牛は四胃も小さいため、牛の大きさに合わせた適度な量を数回に分けて給与する必要があります。
④ バケツでの哺乳
第二胃溝反射の基本は乳首で飲むことでありバケツで飲んだ場合にも反射が起こり辛くなるため一胃に流入する可能性があります。一方、凝乳しない原因も一胃への流入と同様にバケツによる哺乳や、ミルクの温度、濃度の間違い、一度に多量のミルクを与えるなどが考えられます。

どちらのケースでもアシドーシスとなった子牛は親牛のルーメンアシドーシスと同様に腸管へ水が流入することにより下痢をし、最初は非感染性の下痢であっても長期にわたることにより腸管の粘膜が荒れ、そこにウイルスや細菌・原虫などが住み着き感染性の下痢へと変化します。また栄養の吸収不足による抵抗力の低下が病状の悪化に拍車をかけます。

これが哺乳時期のアシドーシスに起因する下痢症のおおまかな発生原因です。意外と人間側の要因が多いと思いませんか?さらには哺乳器具の消毒や洗浄が不完全な場合は細菌が増殖してさらに悪化させます。飼われている環境については言うまでも有りません。

本来牛は非常に丈夫な生き物です。しかし人間が正しい知識を持たず間違った飼い方をすると簡単に病気になってしまうということを理解していただけるとありがたいです。


by とある獣医師

フォト素材:blue eyes photographies

9 Responses to “とある獣医師の独り言4”

  1. 黒ジャケの男

    とある獣医師さん、いつも楽しく拝見させて頂いています。質問をさせて頂きます。

    私の農場では、①と④はやっていないのでそれ以外での質問です。
    ②なんですが、濃度と温度なんですが、濃度とはタンパク濃度をさすのでしょうか?またはエネルギー濃度でしょうか?

    私の農場は、代用乳と生乳を半々でやっているのですが、代用乳は同じ量の湯で溶かせば同じ濃度にはなるのですが、生乳は脂肪等変動があるので、そこもいち原因と考えられますでしょうか?

    温度は中々難しい部分はあるのですができるだけ一定になるようにしています。ただ、適正温度は人肌位(37℃)と考えているのですが、このあたりはどうでしょうか?

    ③の量ですが、一応私の見解として、子牛の水分要求量が体重の10%程度だとどこかのサイトでみたので、出来るだけ、朝夕合わせてその程度で組んでいます。これでは若干多いのでしょうか?

    後、ホル雄とホル雌で下痢に対する抵抗力が異なる様な気がするのですが、何故なんでしょう?F1や和牛が若干弱いのは分かるのですが、ホル同士で雄雌の違いで違いが出るのが理解出来ないです。


    上記返答頂ければ幸いです。



  2. とある獣医師

    黒ジャケの男さんいつも読んでいただきありがとうございます。
    非常に難しい質問ですね・・・。
    まずは濃度の話ですがタンパクの濃度です。

    消化酵素の出生後の変化についてお話します。
    まずは生後一週間は四胃で分泌される消化酵素の主体はレンニンです。レンニンは乳蛋白質の主体であるカゼインを固めたのち分解します。ですから、この時期に代替蛋白質の過剰投与は下痢を引き起こすと考えられます。また過剰の生乳のタンパクが与えられれば凝乳も消化も間に合わなくなり、下痢を起こすと考えられます。

    生後一週間を超えると酵素の主体は徐々にペプシンに変わっていきます。ペプシンの分解能力はカゼインに限らないため代用乳のタンパクも消化できるようになります。ただし、この場合も量が過剰になれば下痢を引き起こすと思います。


    次に温度の話ですが牛の体温は人より高いので牛に与える時はひと肌よりは高い38~39℃程度がよいと思われます。冬場は特に気温が低いため夏場よりも高めに調整し、与える時に上記の温度になるようにするとよいでしょう。ただし60度を超えると蛋白質が変性するので注意が必要です。


    与える量については黒ジャケの男さんの言う通りです。体重の10%を離乳まで与えるのが現在のところ推奨されています。


    最後の質問が一番難解ですね。オスの染色体がXとYでメスがXとXであるのはご存知ですか?一説では免疫に関する情報がY染色体はX染色体に対して少ないため、免疫情報が多い染色体を2本も持っているメスは感染に強いと言われています。
    まあ、オスは強いものが少数残りさえすれば種の存続は可能だということですかね・・・。男はさびしいものですね。



  3. 黒ジャケの男

    とある獣医師さん、本当にありがとうございます\(^o^)/

    私の農場では、生後1週間での下痢が多発していて、その原因の

    一因がおそらく過剰(4㍑/1回)に移行乳を与えていたことによる下痢なのか考え、少しの間3㍑に落としてみたのですが、

    ある程度下痢が収まった気がします。

    やはり、何事も程々が良いのですね。ただ、1週間程度経ったら、徐々に増やして増体を促す様にやっています。

    XY染色体、男は寂しいものですね(;_;)

    しかし、生き残っている我々は幸せだと考えるべきか。。。



  4. とある獣医師

    人間特に日本人は一夫一婦制が法律で決まってるから、まだ幸せですなf(^_^;



  5. sugaWara

    先生の中の法律もそうでしたっけ?(笑



  6. とある獣医師

    一応そうなっておりますが、何か問題でも(笑)



  7. sugaWara

    一応安心しました(笑



  8. とある獣医師

    あくまでも、一応なので(^o^ゞ



  9. 黒ジャケの男

    とある獣医師の相談所では、一夫○妻でわなかったでしたっけ???

    あえて伏せ字…(>_<)



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