今回は蹄の内部構造とその役割を簡単に話していきたいと思います。
上の蹄の構造を見ながら話を進めていきます。蹄の内部構造は3つの趾骨と蹄骨(第三趾骨)を支える伸腱と屈腱の2本の腱、歩行の衝撃から蹄を守る蹄球枕、さらに腱を滑らかに動かすためのとう骨ととう嚢そしてそれらの構造物が合わさった蹄関節からできています。それぞれについて説明します。
蹄骨
我々の指でいえば中指と薬指が内側蹄と外側蹄の蹄骨です。蹄骨の前面は蹄壁に蹄葉を介してしっかりと付着していますが、蹄踵方向では蹄鞘とは付着していません。また蹄骨はアーチ状をすることにより下からの荷重に強い構造になっています。人の足の土ふまずがアーチ状であるのと同じ原理です。
蹄球枕
固い蹄骨と蹄鞘が受ける地面からの衝撃を吸収するためのショック吸収材の役割をしています。
腱
肢を曲げ伸ばしするために必要な線維で、骨に付着するため筋肉の先端部が細くなったものが腱です。腱は蹄球枕とともに衝撃吸収の役割も担っているため、強靭でなくてはいけません。ご自身のアキレス腱をイメージすると分かりやすいかもしれません。腱は2本あり蹄を曲げるために必要な腱が屈腱で伸ばすために必要な腱が伸腱です。
とう骨
腱を動かすため滑車の役割をする骨です。遠位種子骨とも言われます。この骨によって腱の引っ張る方向を変えるという重要な役割があります。
蹄関節
基本的には蹄骨と第二趾骨の間の関節ですがこれにとう骨ととう嚢が組み入れられたのが蹄関節です。
以上が蹄の内部構造です。後ほど蹄病のところでも述べますがここで少し蹄底潰瘍の話をしてみたいと思います。
【図1】
前述したとおり蹄骨は蹄鞘の前面は蹄葉を介し付着していますが蹄踵側では蹄鞘と離れており、腱でぶら下がり蹄球枕に浮かんでいるような状態です。
そこで何らかの原因により蹄骨のぶら下がりが弱くなり蹄骨が沈下した場合、蹄真皮に血行障害がおこり蹄鞘の再生が阻害され蹄底潰瘍が起こるわけです。また蹄骨は蹄踵までの3/4までの長さしかないため、図1の場所によく発生します。さらに蹄鞘と蹄骨の付着の強度は外蹄より内蹄の方が強くなっているため、内蹄より外蹄の方が蹄底潰瘍の発生が多くなってしまいます。
せっかく蹄の構造のはなしに触れたのでもう少し潰瘍の話を掘り下げると、蹄底潰瘍がより悪化しさらに深部感染となると球節が赤く腫れあがり、牛は肢をつくことができなくなることがあります。そこで蹄底を削っていくと潰瘍から膿が浸み出し穴の奥から白い線維性のものが出てくることがあります。
これは屈腱の一部です。これは蹄関節に感染が及んだためです。さらに腐った骨のかけらが取れることがありますが、それは蹄骨の一部です。さすがにここまでの深部感染が起こると断趾(蹄)するしかありません。こうなる前に定期的な正しい削蹄を行い、感染のひどい牛は獣医師に適切な治療をしてもらう必要があります。
今回は以上です。次回は話が重複すると思いますが蹄葉炎についてまたお話ししたいと思います。
by とある獣医師