早いものでもう12月です。今年はスーパーエルニーニョ現象とかで暖冬になるそうです。確かにいつもの12月よりは暖かいような気はしますね。個人的には年齢とともにだんだん寒さが嫌いになってきたので、暖かい冬は大歓迎ではありますが、あまりに雪のないのも北海道らしくないですし、氷に穴を開けてのチカ釣りもできないのもさみしいので、適度な寒さの冬であってほしいですね。
本題です。今月からは数回に分けてルーメンアシドーシスのついてお話ししていこうと思います。いまさらですがルーメンアシドーシスとは何でしょうか。文字通り何らかの原因で第一胃が酸性化してしまうことです。その酸性化を起こす酸は何でしょうか。それは乳酸です。牛の炭水化物の消化吸収のところでお話ししましたが、牛はルーメンで生成される乳酸なしでは生きていけません。それは乳酸をプロピオン酸に変えてルーメンから吸収することにより、体を維持するためのエネルギーを得ているからです(図1)。
図1 ルーメンでの炭水化物の変化
では、この乳酸がなぜ一胃で悪さをするのでしょうか。単純に言えばできた乳酸をプロピオン酸に変えることができなくなり、乳酸がルーメン内にあふれるからです。乳酸は非常に強い酸であり、酸性化したルーメンは酸に弱いルーメン内微生物を死滅させ、その毒素が全身に回るためさまざまな病気を引き起こします。これら酸性化によって引き起こされる様々な症状の総称がルーメンアシドーシスです。
ルーメンアシドーシスと言えば盗食を思い起こす方もいるかと思いますが、現在問題とされているのは盗食の時の起こるような急性のアシドーシスではなく牛の普段の採食行動の中で起こるアシドーシスであり、亜急性ルーメンアシドーシスまたは潜在性アシドーシスと呼ばれているものです。詳しい症状については今後お話していきますが、潜在性というよりは蹄葉炎や肝炎、乳房炎など病気として症状を見せることが多いため急性に準ずるという意味で亜急性ルーメンアシドーシス、SARA(サーラ)と呼ばれています。
ではSARAはなぜ起こるのか。それは牛の体の特性上から二つの原因が考えられます。一つ目はルーメン内で産生された乳酸を処理(プロピオン酸に変換)しきれない場合、そしてもう一つは乳酸を中和できなかった場合です。
来月はこれらの原因それぞれについて詳しく説明していきます。
今年も一年間このコラムにお付き合いありがとうございました。もしよろしければ来年もよろしくお願いします。
少し早いですが、よいお年をお迎えください。