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とある獣医師の独り言24

インフルエンザが猛威をふるっていますね。何を隠そう私も年明け早々にインフルエンザになりまして、出勤停止となってしまいました。ほぼ十年ぶりの発症です。実はインフルエンザと診断されたのは生まれて初めてで、それゆえインフルエンザ薬なるものも初めて処方していただいた訳なのですが、今はタミフルやリレンザではなくイナビルとか言う鼻から吸引する薬が主流だそうです(田舎の村の病院にも有りました)。これが非常に良く効きます。インフルエンザ恐れるに足らずですね。一般にインフルエンザは型も多く、また変異もしやすいため冬になる前に流行する型を予測してワクチンを選択するそうです。この予測がなかなか当たらないため毎年『ワクチン接種したのにインフルになったと』いう話を良く耳にします。しかしワクチン接種ではなく発症して作られた抗体は交差免疫として他の型のインフルエンザにも効果があると言われています。数年前に大流行した新型インフルエンザが熟年層に患者が少なかったのは交差免疫のおかげだったと言われています。詳細はまだ解明されてはいないようですが、今回のインフルエンザの発症で私も数年はインフルエンザにならないはずですが、どうでしょうかね。
 前置きが長くなりましたが、今月からは乾乳の管理と子牛の免疫力についてお話ししていこうと思います。

乾乳期の栄養と出生子牛の関係

①妊娠後期の胎児の成長曲線
乾乳期は経産牛ではボディコンディションを調整し、泌乳期に酷使した消化器特にルーメンを休ませ、乳腺を回復させるとともに、胎児を順調に成長させる重要な時期です。表1で妊娠日齢と胎児の体重、羊水と胎膜、子宮の成長曲線を示してみました。胎児は乾乳期に入る妊娠220日前後から急激に大きくなっているのが分かると思います。この時期に母牛が低栄養に陥ると胎児の成長が止まり、早産などによる低体重児が生まれてくることがあります。乾乳期は泌乳を基本的にはしないため、エネルギー源である糖質よりも胎児の成長に重要なタンパク質を必要とします。牛の利用するタンパクのおよそ50%は一胃の微生物の体タンパクと言われています。そのためには、良好なルーメン発酵が重要であり、そのためには良質な粗飼料と適度な穀類が不可欠と言えます。場合によってはバイパスタンパクの利用も考えても良いかもしれません。昔は泌乳しない=稼がないと考え乾乳期には粗悪な粗飼料を与える傾向がありましたが、非常に悪い考え方です。乾乳期は先ほども述べましたが、一胃と乳腺の回復と胎児の成長をさせる重要な時期です。今後の経営を考えるならば、一番良質な粗飼料は未来がある育成牛に、次に良質な粗飼料は今後1年の泌乳量が決まる乾乳牛に与えるべきです。
また一方でルーメンアシドーシスも出生してくる子牛には悪影響を与えます。アシドーシスは母牛を低タンパク状態にしてしまう事で胎児の成長を阻害します。近年、分娩直後の爆発的な泌乳の開始を狙って、乾乳後期に多量の穀類を与えられる事により、ルーメンアシドーシスに陥っている牛群を見かけます。この管理は最も間違った管理です。この管理をすると泌乳開始時の乳量は確実に上がります。しかし母牛のタンパク不足からくる低体重児の出生、胸腺の未熟な子牛や初乳の質の低下による病弱な子牛の出生を招きます(初乳や胸腺の話は来月を話しします)。また、アシドーシスによるルーメン微生物の死滅がエンドトキシンを産生し、早産を引き起こすことも報告されています。(泌乳の方も一時的なだけで周産期病や蹄病になり最終的な乳量も期待できません)さらには乾乳期もTMRで管理している牛群は飼料の混ぜ過ぎにも注意が必要です。攪拌しすぎることによって粗飼料の線維が砕けて反芻が起こらず、アシドーシスになっている場合も考えられます。下痢をしているような場合はまずはアシドーシスを疑ってみてください。乾乳牛の糞は本来触っても手に汚れが移らないような硬い糞なはずです。
このように乾乳中の悪質な粗飼料給与も泌乳生理を無視した乾乳期の飼料の給与も線維不足も胎児には悪影響しか与えないと言う事です。

本当はインフルエンザの免疫に絡めて、乾乳の管理による初乳や胸腺による免疫の話をしていこうと思ったのですが、またルーメンアシドーシスの話が長くなってしまいました。来月は胸腺や初乳役割と子牛の免疫についてお話しします。来月もお付き合いよろしくお願いします。

byとある獣医師

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