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とある獣医師の独り言9

今月からは蹄病の各論とその発生原因についてお話していきたいと思います。

最初は白線病(白体病または白線膿瘍とも言われます)について説明したいと思います。白線病の原因となる白線の脆弱(ぜいじゃく)を招くのが蹄葉炎であるという事はこのコラムで何回もお話してきたため省略させていただきます。

一度白線がもろくなると蹄底から砂や尖った石などが入りこみます。基本的には後肢の外蹄が最もなりやすく、まれに前肢の内蹄にも見られます。また白線病になりやすい場所は以前にもお話したとおり、【図1】の1→4の順です。
(この図は右の後蹄の図です)

特に【図1】の1の場所は硬い蹄鞘とやわらかい蹄内部の蹄球枕の収縮・拡張が歩行時に常に起こりひずみが発生しやすく、蹄骨に蹄鞘が直接くっついている蹄尖よりも白線の解離が起こりやすくなるため、最も白線病が起こりやすいと言われています。



白線に入り込んだ異物は蹄鞘内に深く入り込み、白線に坑道という溝を作り、同時に蹄真皮で化膿を起こします。さらに化膿によりできた膿は逃げ場がなくなり、蹄真皮を圧迫することによって痛みを起こし跛行を示すようになります。

【写真1】は蹄底を削切したところ白線部に出血跡が見つかりそこを削って行くとBの部分から排膿した写真です。またちょっとわかりにくいかもしれませんが、Aに示した蹄踵の蹄縁角皮から蹄球部に貯留していたと思われる膿が漏出しています。



白線から広がった膿は【写真2】のように蹄球部に膿瘍を作り蹄真皮と蹄の角質の間を解離させます。これを治癒させるためには解離によって壊死している蹄底の角質と白線の坑道をすべて削切し、蹄真皮(【写真2】のピンク色の組織)を露出させる必要があります。

ここを露出させることによって新しい蹄の角質を作らせるためです。



今回のように【図1】の1の近辺に白線病ができた場合は蹄踵にやわらかい部分がありそこに膿が貯留できるためそれほどの痛みは示しません。さらに多少発見が遅く膿が多量に貯留しても蹄踵の蹄縁角皮はやわらかいため容易に破裂(自潰)することが多く、とう骨やとう嚢などの蹄内部を侵食するようなことは稀です。

しかし、これが蹄尖部により近くなるに従って、膿が逃げる場所が少ないため跛行が強くなり、さらに蹄縁角皮も蹄踵に比べると硬いためしばしば化膿が蹄内部に波及します。更に蹄尖(【図1】の3の部位)や軸側壁(4の部位)に白線病ができた場合は痛みも重度であるし、感染も重度になる場合も多く治癒に時間がかかります。
来月はその辺についてお話したいと思います。

今月も写真はすべて牛のフットケアガイドより引用しました。

by とある獣医師

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