北北海道を牛柄トラックで駆ける牛削蹄所。菅原道北削蹄所のオフィシャルサイトです。

Hokkaido Photo 9/11



美幌峠からの屈斜路湖
Canon EOS Kiss X2
photo by SHUN

2015-9-11 Category shun, 風景フォト | Leave a Comment

とある獣医師の独り言31

9月です。一年は早い物ですね。気が付いたら夏も過ぎ、実りの秋になっていました。
今年はここ宗谷では天候不順が続きあまり良い二番草が取れなかったと聞いています。これは全国的な傾向かもしれませんが、年々天候が安定しなくなってきているような気がします。せめて乾草だけでも良い物が取れるようにこれからの天候の回復を祈るばかりです。
では、本題です。
先月は人の炭水化物(デンプン)の消化吸収をお話ししましたが、今月は牛の炭水化物(デンプン)の消化吸収についてお話ししていこうと思います。前回、人の唾液にはアミラーゼと言う消化酵素が含まれていてこれが炭水化物の分解に役立っているとお話ししましたが、牛の唾液にはアミラーゼは全く含まれていません。ですから牛が何度噛み返し(反芻)をしたとしても、口では炭水化物は分解されないのです。何のために噛み返しをするのかは後々お話しするとして、牛も動物ですから体を動かすのにはブドウ糖は不可欠です。牛はどうやってブドウ糖を得ているのでしょうか。
結論から言うと、牛が体で利用するブドウ糖のほとんどは第一胃(ルーメン)内の微生物に依存しています。第29回のこのコラムでふれたのですが、ルーメンはルーメンマットとルーメン液で満たされており、そのルーメン液1ml中にはおよそ50種類一億個の細菌と、200種類200万匹も原虫が住んでいて、お互いがちょうどいいバランスの数で生存し生活することで牛の健康維持に様々な役割を果たしています。このルーメン微生物の中にはいわゆる乳酸菌と言われる微生物が多数存在します。乳酸菌は炭水化物をエネルギーとして利用し乳酸を作ります。これが乳酸発酵です。さらにルーメン微生物の中には乳酸をエネルギーとして利用する微生物も多数存在し、乳酸はプロピオン酸と言われる揮発性脂肪酸(VFA)の一種へと分解されます。このプロピオン酸こそが牛のエネルギー源となるのです。まず、プロピオン酸はルーメンの壁のひだ(絨毛)を通り抜け、そのままルーメン内の血管から血液の中に溶け、肝臓へと運ばれます。肝臓でプロピオン酸はブドウ糖に合成され、もう一度血液を介して全身へ運ばれ牛のエネルギーとして利用される訳です。ちなみに、貯蓄や利用のされ方は人の場合と同じです。もちろん、すべてブドウ糖をルーメン微生物の産生するプロピオン酸に頼っているわけではなく、人と同じように小腸からブドウ糖を吸収する経路も持ってはいますが、それは牛が使うブドウ糖の約3割に過ぎません。いかに牛にとってルーメンが大事なのかが分かるかと思います。

一見すると牛の炭水化物の消化吸収は非常に回りくどいように感じます。しかし、このシステムは牛以外が利用できない粗悪な炭水化物でも微生物の力を借り、ブドウ糖に変換できる点を考えると、非常に効率的なシステムであると言えます。
今月はここで終わりにします。来月はタンパク質の消化吸収をお話ししていこうと思っています。
またお付き合いをお願いします。


byとある獣医師

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