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とある獣医師の独り言20

寒いですね。ここ数年は9月でも夜に外でバーベキューなんかできましたが、今年は本来の北海道に戻ったようですね。その割にはオホーツク海の水温が高く釣りはいまいちの結果が続いています。今年の釣りも楽しめるのはせいぜいあと一カ月、何とかいい思いをしたいものです。
では本題です。今回は前回少しだけ話をしたMUNについて、もう少し詳しくお話したいと思います。



①MUNとは
Milk Urea Nitrogenの頭文字で乳中尿素窒素の事です。牛が採食したタンパク質は一胃で分解されやすい分解性タンパク質(RDP)と非分解性タンパク質牛(UDP、バイパスタンパクとも言われます。)に分けられます。UDPは直接四胃に流れ小腸で吸収されますが、分解性タンパクは前回もお話した通り、一胃の細菌により最終的にアンモニアにまで分解され、できたアンモニアから自らの菌体タンパクを合成し、牛はその菌体タンパクをタンパク源として利用しています。その過程にはエネルギー源として炭水化物が必要となります(図1)。このタンパク質の分解の過程でできたアンモニアは非常に毒性が強く牛の体に害を与えるため一胃の表面から吸収されたアンモニアは速やかに肝臓で無毒化され尿素体窒素(BUN)として血液中を流れます。牛乳は血液から作られるので乳汁中にもBUNが入り込んできます。それがMUNです。
②MUNと乳タンパク率の関係   乳量旬報や乳検速報に記載されているMUNと乳タンパクを利用することで牛群の栄養状態を知ることができると言われています。下の表はバルク乳でのMUN・乳タンパクと飼料のエネルギー・タンパク質バランスの関係を表しています。
◎MUNの上昇の原因
1)アンモニアの過剰生産
   タンパク質飼料の多給で起こります。また放牧初期の牧草はタンパク質が高い為MUNが上昇することがよく見られます。



2)一胃の細菌不足
ルーメンアシドーシスによって細菌の絶対数が減少するとアンモニアが利用されずMUNの上昇が見られます。言いかえると炭水化物の多給によってアシドーシスとなりMUNが上昇することがあります。
3)エネルギー不足
一胃の細菌がアンモニアを利用するためにはエネルギーとなる炭水化物が必要です。ですからエネルギー不足ではMUNの上昇が見られます。
   
◎MUN低下の原因
タンパク質特に分解性タンパクの給与不足で起こることがあります。しかし実際には低下が問題になる事は少なく、乳タンパクが正常範囲であればMUNが一桁の値だとしてもなんら影響はありません。逆に一胃での細菌の増殖が盛んである証拠とも言えるのです。
 
MUNはアンモニアの利用状況を反映しています。アンモニアは非常に毒性が強く胚の早期死滅による受胎率の低下や、アンモニアの解毒のために肝機能障害を起こします。またタンパク不足に陥るため牛は痩せてきます。
最近は飼料設計がしっかりしているためタンパク過剰によるMUNの上昇は起こりにくいと言われています。むしろルーメンアシドーシスによるアンモニアの利用障害による上昇の方が問題です。ですからMUNの数値のみで判断するのではなく、乳タンパクを含めた乳成分(特に繊維の採食状況に関係する乳脂肪)、糞の状態、反芻の回数、ボディコンディションなど総合的な判断が必要とされています。
今月もお付き合いありがとうございました。

byとある獣医師

とあるphoto


猿払の朝焼け


小梅ちゃん、お顔ないない
olympus pen
photo by とある獣医師

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