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とある獣医師の独り言15

今年は雪が少なくて春が早いなんて言っていたら4月4日の吹雪はすごかったですね。私の住んでいるところは風に加えて降雪量も半端なくて、今シーズン一番の暴風雪じゃなかったかと思います。簡単には春は来ないものですね。
それではさっそく先月に引き続きPDDの話をしていきたいと思います。いきなりですが乳房の間が化膿して悪臭を放っているのを見たことはないですか?(写真が無くてすいません。手頃な写真を持っていなくて…。)最近知ったのですが、あれもPDDと同じ原因菌で乳房DDと呼ばれているそうです。PDDの病変部が牛が横になった時に乳房につくことで感染するそうです。



写真 1 趾間過形成にできたPDD



写真 2 痛みのためつま先立ちする牛

いきなり話がそれましたが、乳房DDは別にして肢に発生するPDDの90%は後肢に起こります。できる場所としては球節上の趾間の皮膚にできることが最も多いようですが、蹄球や副蹄周辺、趾間過形成の上(写真1)、趾の背側の蹄冠部、そして時には蹄底潰瘍の病変部にもPDDができている事があります。一般に毛が少なく皮膚の柔らかいところを好むようです。PDDは痛みが非常に強く、特に趾間の皮膚や蹄球にできた場合には患部に負重することを嫌い、つま先立ち(写真2)で歩くことが良く見られます。このつま先立ちが蹄にねじれや無理な力を発生させ白線病や裂蹄の原因にもなります。
PDDを発生させないためには原因菌を持ち込まない事が一番ですが、これだけ全国的に蔓延してしまうとなかなか簡単には行かないと思います。特に一度農場に入り込んでしまったPDDを完全に排除するのは非常に困難です。しかし発生を制御することはできるはずです。最初に手をつけるべきことは肢もとの環境の衛生の改善です。具体的にはストールに敷料を十分に入れることや除糞回数を増やすことによって、牛床をできるだけ乾燥させ清潔な状態に保つことです。またフリーストールでは感染源である通路のスラリーを溜めないためにもバーンスクレーパーの稼働頻度を上げるなどの工夫も必要です。さらにパーラーで搾乳している場合には、削乳時に趾間に付着しているスラリーを洗浄して除去してあげることも大事です。
PDD感染牛が移動して歩くため蔓延しやすいフリーストールでは、蹄浴槽を利用した5~10%の硫酸銅での蹄浴が世界的にも最も効果があると言われています。ただ蹄浴に使用した後の排液による銅汚染が深刻な環境問題となっています。最近では銅濃度の低い薬剤や消毒液を混合した薬剤、泡状になり患部に付着しやすくなった薬剤などいろいろできては来ていますが、決定打となるような蹄浴剤が出てきていないのが現状です。やはりPDDの抑制には硫酸銅の使用量を減らす意味も含めて、削蹄師による削蹄時の処置と重症な牛の摘発、その摘発牛の獣医師による個別の治療が地道ではありますが最重要だとおもいます。
 最後に治療について少しお話します。まずは病変局所をよく洗浄するのはもちろんですが、これは私の経験上ですがイチゴ状やつる状になった病変を血が出るまで削り落してから薬剤を塗りこんで包帯をした方が治りが早いような気がします。その際に抗生剤の併用は非常に有効だと思いますが、出荷制限には十分注意しなくてはいけません。
二回にわたりPDDについてお話してきましたが、PDDは感染力も強く、また痛みも激しいため治療にかかる労力や経済的損失は非常に大きなものがあると思います。しかし最近では直腸内の新鮮な糞からPDDの菌が発見されたという報告もあることから、PDDの菌は牛の体内の常在菌としての地位を確立したような感じも受けます。そうなると先月も述べましたが発症するかしないかは牛群の健康状態次第だと思います。牛がせっかく持っているバリア機能を喪失させないような飼養管理が一番重要だと思います。

今月も写真はテレビドクター3から引用させていただきました。

by とある獣医師

simonuma


Nikon D80 Nikon AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
photo by sugaWara

2014-5-7 Category sugaWara, 風景フォト | 3 Comments

horonobe



★2013 ‘BLACK&WHITE SHOW リザーブ・グランドチャンピオン牛と記念撮影★
Nikon D3200 Nikon AF-S DX VR Zoom-Nikkor 55-200mm f/4-5.6G IF-ED
photo by RYOTA

2014-5-7 Category ryota, 風景フォト | Leave a Comment

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