北北海道を牛柄トラックで駆ける牛削蹄所。菅原道北削蹄所のオフィシャルサイトです。

Hokkaido Photo 5/9



PENTAX K-r smc PENTAX-DA★ 60-250mmF4ED [IF] SDM
photo by EITARO (sato)
稚内市にて、犬と軽自動車。

2013-5-9 Category eitaro, 風景フォト | Leave a Comment

とある獣医師の独り言3

ルーメンアシドーシスはルーメンの細菌(グラム陽性菌)が大量に死ぬことによって、大腸菌の乳房炎の時のように毒素(エンドトキシン)を発生させることは先月お話しました。では今月はエンドトキシンがなぜ蹄病を起こすのかについてお話します。

このエンドトキシンがヒスタミンという炎症物質を体の中で作らせます。花粉症の方は聞き覚えがあると思いますあのアレルギーを引き起こす厄介な奴です。ちなみにサバを生で食べると食あたりを起こすのもヒスタミンのせいです。サバの体内のヒスチジンが細菌の影響でヒスタミンに代わり食中毒になります。魚が痛む前に血抜きをして内臓を除去できれば刺身で食べられますが、個人的には〆サバも有りだと思いますが・・・。

話が横道にそれましたがこのヒスタミンは血液に乗って全身すべてに末端にまでいきわたります。蹄も例外ではなくヒスタミンの影響を受け蹄の角質を作る蹄真皮に炎症を引き起こします。(蹄の構造と名称は図1を参照してください)そのせいで蹄真皮の血流が悪くなり、浮腫が起こります。これが蹄葉炎です。急性の蹄葉炎では膨れ上がった蹄真皮は固い蹄鞘(ていしょう・蹄壁と蹄底の角質)の中では膨れることもできず激痛をもたらします。

図1 蹄の構造 フットケアガイドより引用



ルーメンアシドーシスによる慢性の蹄葉炎ではそれほど激しい症状は見られない代わりに、蹄底潰瘍や白線病などの蹄病となって現れます。蹄の角質は蹄縁、蹄冠、蹄葉、蹄底の4つの異なる蹄真皮から作られ、それらが合わさって全体の蹄が形成されます(図2)。血流の悪化は角質の形成とそれぞれの角質の結合に障害を起こし様々な蹄の病気を引き起こします。ルーメンアシドーシスに起因する代表的な蹄病である蹄底潰瘍と白線病について発生原因を簡単に説明します。

図 2 真皮の分布(斜め下から見た図)蹄縁(P)、蹄冠(C)、蹄葉(L)、蹄底(S)の真皮から、それぞれ別の角質が生成され、それが張り合わされて全体の蹄角質が形成されている。(テレビドクターより引用)



まずは蹄底潰瘍についてですが、蹄骨は蹄真皮と結合組織で吊り下げられた状態で固定されています。また蹄骨の後半と蹄真皮の間は蹄球枕(ていきゅうちん)というクッションで満たされ、衝撃の吸収をしています。蹄葉炎ではこれらの組織がもろくなり、さらに蹄骨はアーチ型をしているため体重が後ろ側の蹄骨にかかり沈下を起こして、蹄真皮が圧迫を受けて蹄底潰瘍が発生します。(図3)

図 3蹄底潰瘍のでき方 フットケアガイドより引用



白線病の原因は、蹄の形状にあります。蹄は升とは違い底からのねじれるような荷重には弱い形状になっており、さらに蹄葉炎による血行障害があれば白線の結合が弱くなり白線病が起こります。(図4)

図 4 白線病のモデル テレビドクターより引用



最終的に慢性蹄葉炎は放っておくと起立不能になり廃用になる可能性の高い病気です。それは姿勢異常により蹄が変形していくためです。蹄の構造上蹄尖部では蹄骨と蹄鞘の間が狭く、蹄真皮は蹄骨に挟まれて締め付けられます。そのため蹄葉炎による充血、浮腫は痛みや不快感を生じさせ、牛はかかとの方に体重をのせ写真1のような姿勢をとるようになります。

写真 1 フットケアガイドより引用



そうすると最終的には蹄は変形し写真2のようになります。このような姿勢や蹄では起立が困難となり、褥創(じょくそう)ができ、肢が腫れ最終的には立てなくなるでしょう。

牛は痛みには非常にがまん強い生き物です。痛みを見せること=肉食獣に襲われることにつながるからです。痛がっていた翌日には痛がる様子がなくなっていたっていうことはよく聞く話です。しかしそれは水面下で炎症が進行しているのかもしれません。蹄病は早期発見、早期治療が大原則です。少しの異常でも見逃さないことが肝要です。

写真 2 フットケアガイドより引用


さて三回にわたってルーメンアシドーシスの話をしてきましたが、ルーメンアシドーシスの危険性について理解していただけたでしょうか?今回でルーメンアシドーシスの話は一旦終了です。次回はアシドーシス繋がりで子牛の下痢についてお話したいと思います。

by とある獣医師

2024 菅原道北削蹄所|北北海道を幅広くエリアカバーする牛削蹄所です . | Blue Weed by Blog Oh! Blog