北北海道を牛柄トラックで駆ける牛削蹄所。菅原道北削蹄所のオフィシャルサイトです。

とある獣医師の独り言25

春のような日々が続いていますがまだ3月ですね。今年は2月が暖かくさらに雪も降らないため非常に楽な冬を送らせてもらっているのはありがたいのですが、去年から氷上のチカ釣りを始めたんですが氷が薄すぎて乗ることができません。この道北で川に氷が張らないなんてやっぱり温暖化が進行しているだと実感しています。

先月に引き続き乾乳期の栄養管理と出生子牛の関係で今回は胸腺についてお話ししていきます。

乾乳期の栄養と出生子牛の関係
②胸腺の発達
胸腺の話をする前に少し免疫についてお話ししようと思います。免疫は専門用語が非常に多く理解し辛いので、ここではかいつまんでかなり簡単な話にしていきたいと思います。
まず牛や人間を含めた脊椎動物にはウイルスや細菌などの異物が侵入した場合にそれを排除しようとする働きがあります。また、ガン化した自分の細胞や老化した細胞も除去しなくてはいけません。この防御作用が『免疫』です。免疫は自分の細胞かそうでないのかを見分けなくてはいけません。
小学校の時に習った理科を思い出して下さい。血液には赤血球と白血球があって赤血球は全身に酸素を運ぶ役割を、白血球は侵入してきた異物を退治する役割があると習ったはずです。免疫に関与するのは勿論白血球の方です。代表的な白血球は次のようなものがあげられます。

1)好中球・単球(マクロファージ)・好酸球
これらはひたすら異物を食べて処理します。
この中でマクロファージのみが後述するT細胞に異物の侵入を教える重要な役割を持っています。
2)NK(ナチュラルキラー)細胞
体内のウイルスに感染した細胞や癌細胞を破壊する役割があります。
3)B細胞
過去に侵入してきた異物(抗原と言います)の再度の侵入に対して抗体を作ることで対抗しようとします。B細胞はマクロファージとT細胞の指示で抗体を作るように動きます。
4)T細胞
T細胞はさらに次のようにわかれます。
ヘルパーT細胞:抗体を作るB細胞を活性化します。余談ですがHIVウイルスはこれを破壊するウイルスです。
キラーT細胞:ウイルスに感染した細胞やガン細胞を破壊します。
サプレッサー(調節)T細胞:亢進した免疫を制御します。

また免疫は細胞性免疫と液性免疫(体液性免疫)に分けられます。簡単に言えば両者の違いは抗体を介するか、白血球がひたすら食べるかの違いです。始めに異物はマクロファージに食べられます。ここでマクロファージは抗原の存在をヘルパーT細胞に伝達します。ここまでは液性も細胞性も一緒ですが、ヘルパーT細胞がB細胞に抗体を作るように支持を出すのが液性免疫、ヘルパーT細胞が好中球やキラーT細胞を増やすように支持を出した場合が液性免疫です。横道にそれますが臓器移植で拒絶反応が出るのは細胞性免疫でキラーT細胞が移植臓器を異物と認識するからだと言われています。

話は胸腺に戻しますが、胸腺はこのTリンパ球を作り出している場所です。(ちなみにTリンパ球のTはThymus(胸腺)の頭文字です。ついでにB細胞のBはBone marrow(骨髄)です。)胸腺の役割は最近まで良く分かっていませんでしたが、抗体産生に非常に重要なTリンパ球を育てられる唯一の臓器だと言う事がわかってきました。
子牛虚弱症候群(WCS)と言われる出生後すぐに下痢や肺炎を発症し、出生後6週間以内に高い死亡率を示す病気がありますが、このWCSの牛は胸腺が健康な牛に比べ非常に発達が悪かったという報告が有ります。胸腺の発達が悪い場合Tリンパ球が作られないため、細菌やウイルスに侵入された場合に抗体を産生することができず、その結果として細胞性免疫に頼らざるを得ず、最終的に死亡するケースが多いとされています。胸腺が発達しなかった原因はウイルス感染、ビタミン不足などさまざま言われていますがが、まだ解明には至っていません。しかし妊娠後期に何らかの原因で母牛の栄養状態が悪化した場合にこの症状が多発したという報告が有ります。母牛のタンパク摂取不足が子牛の胸腺の形成不全を招く恐れがあるというわけです。この観点からも乾乳期の飼養管理の重要性が伺えます。
このWSCについて、胸腺の大きさや触診の仕方については少し古いですが農業共済新聞の2008年10月29日版で小岩先生が記事を書かれていますので是非参考にしてください。(ネットで胸腺 子牛でも検索できます。)

来月は乾乳期の栄養と出生子牛の関係の③初乳についておはなしします。今月もありがとうございました。

Comments are closed.

2020 菅原道北削蹄所|北北海道を幅広くエリアカバーする牛削蹄所です . | Blue Weed by Blog Oh! Blog