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とある獣医師の独り言19



秋です。宗谷にも待ちに待った鮭釣りのシーズンがやってきました。このように竿がずらりと並ぶとむずむずし出します。この時期は全道各地から鮭を求めてたくさんの人が集まります。中にはテントで寝泊まりしたり、車中泊をしながらシーズン終了まで釣り三昧の人もいるようですが、我々勤め人は休みの日を今か今かと心待ちにしています。早くコラムを書きあげて仕掛けの準備をしなきゃ(笑)。

今月は飼料成分別のルーメン微生物の利用法についてお話しします。飼料成分は大まかに炭水化物(糖質や繊維)、タンパク質、脂質に分けられます。


①炭水化物の代謝
炭水化物はルーメンの細菌の利用のしやすさ(分解速度の速さ)から易発酵性(いはつこうせい)基質と難発酵性基質に分けられます。易発酵性基質はいわゆる糖質と呼ばれる糖類やデンプンのことで、難発酵性基質とは食物繊維のことです。牛はルーメン内の微生物によってセルロースやヘミセルロースのような食物繊維も分解してグルコース(ブドウ糖)やキシロースとして利用しているのです。チモシーを例に考えると、チモシーの易発酵性基質は10%程度しかなく、半分以上は難発酵性基質となります。人間では1割しか栄養にならないものを牛が食すると6割以上を食料として利用できることになります。
またルーメン細菌は基質の利用性によってセルロース分解菌、デンプン分解菌、ヘミセルロース分解菌などに分けられます。一般的にセルロース、ヘミセルロースなどの繊維からは酢酸が合成され、これは乳脂肪となります。また、デンプンや糖類などの糖質からは乳酸が生成され、乳酸は乳酸分解菌によってプロピオン酸に合成されます。このプロピオン酸は酢酸や酪酸を産生するよりエネルギーロスが少ないため(話が難しくなるのでその理由についてはここでは話しません。決してわかんない訳じゃないですよ。念のため。)、牛が利用できるエネルギーが増えることにより乳量が増えることになります。このことは非常に良いことに思えますが、デンプンが乳酸利用菌の処理能力を超えて供給 されてしまうと、乳酸によるルーメンアシドーシスへと繋がっていきます。

②タンパク質の代謝
タンパク質はルーメン細菌でペプチドやアミノ酸、さらにアンモニアや有機酸まで分解されます。この分解物から新たにタンパク質が合成される話は以前にもしましたが、ルーメン細菌で最も特徴的な事はアンモニアからでもタンパク質を合成できる菌が存在すること事です。タンパク質の多給によりルーメン内でのアンモニア生成速度が利用速度を上回った場合は、ルーメン壁からアンモニアが吸収されルーメンアルカローシスとなります。症状としては食欲減退、削瘦、繁殖障害などアシドーシスとよく似ています。タンパク質給与の指標と言われるのがMUNで一般的に10~15mg/dlが正常値だと言われていますが、炭水化物の給与状況やルーメンの細菌との兼ね合いなので一概に高値だから多給、低値だから少給とは言えないと思います。たとえば、アシドーシスでルーメン細菌が減少していればアンモニアは利用されず高値を示しますが、決してタンパク質の多給ではないですし、逆にルーメンの状態が良ければ低値を示しても特に問題は無い訳です。すべては牛の糞の性状や腹の張りなど健康状態を見ながら総合的に判断するべきです。

③脂質の代謝
 脂質はほぼ90%ルーメン微生物によって分解され脂肪酸とVFA(ほぼプロピオン酸と酪酸)に分解されます。脂肪は多給すると細菌自体がコーティングされルーメンの発酵が悪くなると言われています。

今月はルーメン内での飼料の代謝について少し掘り下げてお話ししました。今月もお付き合いありがとうございました。

byとある獣医師

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