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とある獣医師の独り言16

春ですね。ようやく私の住むところも草地に草が伸びて放牧地には牛が放される時期になりました。暑くもなく寒くもなくちょうどいい時期になりましたね。
では早速本題に入りましょう。今月は削蹄の重要性についてお話します。今までのまとめ的な話になりますがよろしくお願いします。

①削蹄と乳量
蹄に不安があると乳量が減少します。これはフリーストールでは飼槽や水槽まで歩いていく必要があるため勿論ですが、繋ぎ牛舎でも同じように乳量は減少します。牛は基本的に立って採食し水を飲み、寝て反芻します。ですから削蹄が不十分で蹄に違和感を持っている牛は寝起きを嫌がり採食量が減るため乳量も減ってきます。

②削蹄と蹄病
蹄に違和感があると寝起きの回数が減ることで、一度起立したら長時間起立するようになり蹄に負担をかけ白線病や蹄底潰瘍を発症させるリスクも上がります。特にフリーストールではスラリーの中での持続起立となりPDDやスラリーヒールと言った感染性の蹄病を増やすことになります。

③削蹄とアシドーシス
採食量の低下による空腹が数日続くと牛は寝起きの回数を減らしても栄養が取れるように反芻が必要な粗飼料を嫌い、消化スピードが速い濃厚飼料を好んで食べるようになります。それを何日か繰り返すと一胃は濃厚飼料の分解によってできた乳酸によりルーメンアシドーシスとなり乳質の悪化、乳量の減少へ拍車をかけます。
さらにルーメンアシドーシスは蹄葉炎や蹄底潰瘍を引き起こし、ますます蹄の痛みが酷くなります。始めは違和感だけであった蹄も痛みがひどくなるにつれ起立が下手になり、寝起きに際にあちこちぶつけることで関節の腫れや褥瘡ができ、最終的には起立不能となります。


図 1 正常な子宮


図 2 子宮捻転

④ 削蹄と子宮捻転
  本来は牛が横になる動作はゆっくりと行われます。ところが蹄に痛みがある場合は横になる動作の途中で痛みに耐えきれず勢いよく寝てしまうことがあります。これにより左右不対称に大きくなっている子宮角は、胎子と胎水の移動でバランスが取れなくなりくるりと捻じれることで子宮捻転を発症してしまいます。(図1.2 文永堂出版『獣医繁殖学』より引用)


図 3 お産時に牛が取る姿勢

⑤ 削蹄と難産
  実は蹄の痛みは難産も引き起こします。牛は陣痛が始まると頻繁に寝起きを繰り返します(このことが前述の子宮捻転にも関係します)。その中で図3の姿勢が難産の減少に役立ちます。この前肢を折り曲げ後肢だけ起立した姿勢は胎児を骨盤の中から腹腔に戻すことにより、胎児が自らの力で肢や首を伸ばし、異常な姿勢で産道に入るのを防ぎます。ただし胎児が生きている場合に限っての話です。
後の蹄に異常があればこの態勢を維持することができないため難産が増えるわけです。

このほかにも削蹄の不備は様々な疾病を引き起こすので、最近はアニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から削蹄は非常に重要視されています。私は個人的に牛の健康を維持するために一番大切なことは餌の管理で次には削蹄であると思っています。『うちは乳量を増やすために濃厚飼料を増やさなきゃいけないから、削蹄師を料金の安いところに変えるんだ。』と言う人がいますが、本来は逆で濃厚飼料を増やすからこそしっかりした削蹄師に蹄の管理をしてもらうべきだと私は思います。

今回で蹄の話は一旦終了します。至らない点や説明が下手で分かりにくかった点も有ったかと思いますが、どうかご容赦ください。
勝手ながら次回からは蹄に関係が深く牛の管理では最も重要なルーメンの話をしていきたいと思います。来月からもお付き合いのほどよろしくお願いします。

by とある獣医師

One Response to “とある獣医師の独り言16”

  1. 匿名

    毎月楽しみに勉強しています!



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